クッキングハウスからこんにちは No.93


目次(青字の記事を抜粋してあります)  2003年12月15日発行
SSTの効果はすごい…1、目次…1、不思議なレストランの元気を届ける…4、精神保健福
祉ボランティア全国の集い…7、地方講演旅日記…8、こもりうたコンサート…9、いもほりから 平和まつり…11、クリスマスカード…12、バレーボール大会…12、イベントのお知らせ…13、 クッキングハウス紹介…15、各地からありがとう…16、講演スケジュール…16

SSTの効果はすごい
〜人生の質を高めていくために〜
〜人との気持ちいい関係をつくるために〜

みなさまお元気でいらっしゃいますか。文化・学習のチャンスをたくさんつくり、地域で暮らすメ
ンバー達の人生の質を高めていきたいと、今年もコンサートや講演会や絵画教室、メンタルヘ
ルス市民講座など多彩な活動をしてきました。
 特に、SST(社会生活スキル学習)は、仲間の応援を感じながら、メンバーや家族が人との気
持ちいいコミュニケーションや行動のスキルを具体的に学び、現実生活に直接役に立つ方
法として、力を入れて学ぶチャンスをつくってきました。メンバーは自分で選び、どのプログラム
にも参加できます。この他に月1回メンバーと家族それぞれのための前田ケイ先生のスペシャ
ルSST講座があります。SSTは、自分に問題解決する力があることを発見でき、更に自分を応
援してくれている仲間がいることを確認できる、競争とは全くちがう共に生きていることを学べ
る方法なのです。
 クッキングハウスのすべてのメンバーにSSTを学ぶチャンスがあることを、私は誇りに思って
います。
 12月5日〜6日のSST普及協会の第8回学術集会にも全国各地からなんと658名という過去
最高の参加者で、会場が熱気でいっぱい。各地の病院や作業所や生活支援センターで頑張っ
ている、なつかしい人たちに会うことができました。「地域ケアの時代を切り拓くために」今SST
が最も重要とされている手法なのだと、たくさんの発表やシンポジウムからわかりました。
 厚生労働省は72000人の社会的入院者の退院政策を発表しました。ぜひとも実現してほし
い。これが実現できたら日本の精神科医療の質も変わるでしょう。何よりも、クッキングハウス
のような場が地域にくまなくできなければ、とあらためて私達の役割の大切さを感じて帰ってき
ました。来年の学術集会は、12月3日〜4日、栃木県です。来年こそクッキングハウスでの
SSTの効果を発表しましょう。    (松浦幸子)


地域にSSTがあるって大切! 
 
 クッキングハウスのスタッフとしてSSTに出会い、私自身も多くのことを学んできました。その
中では、私自身が励ましてもらったこともしばしばです。
 そんなSSTを全国で取り組んでいる人達が、互いの日常活動の成果を報告しあい、さらに知
識を深めていくSST学術集会に参加することを、とても楽しみにしていました。第1日目の基調
講演をなさった西園昌久先生が、精神障害を抱えた人が「生きる意味の発見」をする必要性を
お話なさっていたのが印象的でした。先生は「生きる意味の発見」として、1、安らげる居場所 
2、心置きなく話せる人 3、過去を見直せる自負心 4、楽しめる生活 5、自立する意思 こ
の5つを上げていました。私はクッキングハウスでの日常の活動とSSTはこの5つにアプローチ
できるものだと感じました。だからこそ、病院だけでなく、地域の中で生活する人に密着した、ク
ッキングハウスのような居場所が存在し、SSTを行う必要があるのだと改めて感じました。
そしてべてるの家の発表は、とても温かいものを感じました。日常からの関係作りができてい
るからこそ、あのような自然なセッションができるのでしょう。スタッフ、仲間であるメンバーへの
信頼の気持ちが、メンバーの話の中からにじみでていました。べてるの家の人を見ていると実
に楽しそうですが、問題がないわけではなくて、それぞれが、幻聴や妄想に苦しめられたり、被
害的になってつらくなったり、いつも問題が起こっています。しかしそのことを仲間に語り、助け
てもらうことで、イキイキと生活していることが伝わってきました。弱さが力に変わっていくこと
を、感じさせてくれました。
 クッキングハウスでも同じような場面がたくさんあるように感じます。暮らしに近い場所であ
る、地域のSSTを今度は発表したいね。そんなことを言い合って帰ってきました。そのことを目
標に、また来年一年頑張りたいと思います。(林由佳里)


スタッフのためにもなるSSTの力を実感
 
SST学術集会に参加し、各地でのさまざまなSSTの実践報告を聞くことができました。とくに印
象に残っているものとしては、鹿児島での路面電車利用をめぐる三州脇田丘病院でのSSTと
新潟県の南浜病院でのSSTの実践があります。
鹿児島には路面電車があるのですが、患者さんの多くは外出に不安があったり、路面電車の
無料パスを利用していない状況にあったりしたそうです。そこで、SSTで路面電車の利用をめぐ
る課題に取り組んで、実際に路面電車に乗ってボーリングに出かけるという外出プログラムを
行いました。その結果、それまでは路面電車の利用の仕方が分からずにタクシーで用事を済
ませていた人も外出プログラムに参加することで自信をつけていったそうです。
この報告を聞き、SSTは実際の生活に役に立つものであり、自信を回復して生活をより豊かに
していくものだと納得することができました。
また、南浜病院でのSST実践では、新たにSSTを導入しようという機運の高まるなか、病院の
スタッフ全員がSSTの研修を受けて病院全体がSSTの導入に向けて励んでいったという報告
がありました。メンバーのために導入したSSTでありましたが、病院のスタッフがSSTを学んで
いくにしたがって、職員同士の人間関係が良くなってき、目に見えて笑顔が増えてきたというこ
とでした。報告の題に「思わぬ効果」という一言があり、私はその文句に興味を持って参加した
のですが、その効果とは、職員がSSTから学ぶことが多く、結果としてSSTだけでなく他の仕事
にもモチベーションが上がってきたというものでした。
確かに、私自身もスタッフとして週に1回、クッキングハウスでのSSTに参加していますが、メン
バーの出してくださる課題が本当に自分の役に立つことが多く、SSTで大切とされる"良いとこ
ろを見つけて誉める"という姿勢を学んで取り組んでいくことで、どうしても相手の嫌な部分に気
付きがちな自分の気持ちを変えていくことができています。嫌な部分に目を向けることよりも、
良いところに目を向けることの方が、ずっとずっと自分自身の気持ちも晴れやかになることを、
SSTを通していつも感じているので、スタッフが変わってきたという報告を自分の体験と照らし
合わせながら聞くことができました。(小林葉瑠)