ホーム > 心の居場所(2021年12月号)
生きていることが大事だよ
心の居場所をやり続けてきて良かった

2021年もあと一ヶ月余りとなりました。皆様お元気でいらっしゃいますか。
長いコロナ禍の不自由さと閉塞感に耐えながら、よくみんなで乗り越えてきたな、と一年を振り返って思うことです。苦労したことも嬉しいことも、たくさんのドラマのあった年でした。
悲しい別れもありました。12年前、退院後の居場所を探してやってきたメンバーの綾さん。不自由な足を杖で支えながら、SSTで母からの自立の練習を積み重ね、通い続けました。笑顔を見せてくれるようになり、「さんぽ」のうたをつくるまでになりました。「来年の35周年には、ちょっと太ってしまったから新しいワンピースを買います」とニッコリ語っていたのに、突然の別れでした。私達は「綾さんと出会えてよかったよ」と手作りのお別れ会をしました。メンバーの花菜子さんが「十句観音経」のお経をあげてくれ、皆で不思議なレストランを歌い、一人一人が一緒に過ごした楽しかった思い出を語りました。
そんなお別れ会のあと、11月11日調布市より表彰された「社会福祉功労賞」。35年目の居場所の活動をようやく認めてもらえたことは、メンバーにとってもスタッフにとっても、応援して下さっている市民の方々にとっても、嬉しいことでした。数えきれないつらさや困難を乗り越えてきたからでしょう。小さな場から「生きていることが大事だよ」と希望の灯りをともし続けてきたからでしょう。
スタッフとメンバーが用意してくれたお祝い会。たくさんのご馳走が皿からあふれそうです。岡田さんから紅白饅頭、静岡の鳥居さんからミカン、佐渡の梶井さんからサザエ、木戸さん、野口さんからお菓子、祥子さんからお花、スタッフ・ボランティア一同よりの明るい大きな花束。一人一人のメンバーが居場所に出会えて助けられたことを、自分自身のヒストリーとして語ってくれました。「一人大阪に居て、孤独で死ぬことばかり考えていました。ある時、カウンセリング室で『不思議なレストラン』を読み、クッキングハウスに行ったら私は生きていけそうだ、と希望を見つけたのです。『不思議なレストラン』を持ち、上京。『クッキングハウスに入りたい、ここで働きたい』とお願いしたら、松浦さんは受け入れてくれたのです。今、こうして私はこの居場所があるから元気に暮らせています」と泣きながら語るキヨさん。メンバー達が語ってくれる正直で真実の思いが、私の心にひたひたと満ちてきました。
こうして生きて語り合える場がある。心の居場所をやり続けてきて良かった、としみじみ思いました。 (松浦幸子)