自由になるために歩き続けた30年
初夏の陽差が眩しく、木々の緑が光っています。
皆様、お元気でいらっしゃいますか。
クッキングハウスの30周年記念の総会も、
大家族の久しぶりの集合のような、和やかな会となりました。
30年の歩みをソシオドラマでたどってみたいと、
台本作りをしながら、気づいたことがあります。
どうして、早く気付かなかったのかと、思うことです。
かつての精神科医療の閉鎖性から、
私は患者さんたちのたくさんの不自由を見て、
つらくなったのでした。
「閉鎖病棟で鍵がかかっていて、自由に外出できない」
「風呂に入れる日が決まっていて、自由に入れない」
「給食を食べるだけで、自由に外出できない」
「電話がなくて、自由にかけられない」
「新聞や本を自由に読めない」。
数え上げれば、キリがないほどの不自由だらけでした。
人間として、当たり前の自由が奪われるとどうなるか。
自分に対して自信がなくなり、支配者の言うがままに動くようになる。
うつろな表情になり、下を向いてトボトボ歩くようになる。
人間には自由に生きる人権があるのだということも、
気づかなくなる。
そして、自分のことも、相手のこともかけがえのない
存在なのだと思えなくなる。
「人間らしく、生きる自由を取り戻したい!!」。
病院ではなく、街の中に当たり前に暮らせる場をつくろうと、
小さな居場所を開いたのでした。
自由はただ待っていてもやってこない。
自らが自覚し、学び、行動し、
努力して手に入れていくものなのだと思います。
クッキングハウスの30年の歴史そのものが、
自由になりたいと切望して歩き続けた道だったのです。
これからも、自由への道を一緒に切り拓いていきましょう。
(松浦幸子)