ホーム > 心の居場所(2010年12月号)
       ゆっくり成長すればいい
〜人生の本当の意味を見つけるために〜

皆様お元気でいらっしゃいますか。
秋はメンバー達と動くクッキングハウスの旅によくでかけました。富山でのSST学術集会ではSSTのデモンストレーションで、コミュニケーションの学びの楽しさや奥深さを、みていただきました。
斉藤さんは「SSTの可能性」というテーマの当事者側からのシンポジストにもなり、自らの成長のプロセスを話してくれました。長い引きこもりから、母に連れられてクッキングハウスにきた時、「人とのコミュニケーションが楽にできるようになったら、自分も楽しい人生が送れるようになるかもしれない」と希望を抱くことができたこと、その希望に導かれて、クッキングハウスでの9年間、SSTに参加し続け、コミュニケーションの練習をしたのです。
ようやく今、実感していることは「自然に話せ、自然に笑っている自分がいる」ということ。それまでは、話す度に“ここで話してよかったのだろうか、そこで相づちを打つべきではなかったか。”と後悔ばかり。人が笑っているから笑わなくてはいけない、と無理に笑っている自分がいたのです。人との関係のとり方にエネルギーを使いすぎ、全くゆとりがなかったのに、今はゆとりがでてきて、自立のことも考えられるようになってきた斉藤さん。大きな会社でたくさんの給料をもらうことが勝者だと思ってなれない自分を苦しめていたが、「人と気持ちいいコミュニケーションをとって生きていくことが幸せにつながるかもしれない。」と仲間がいてくれたから思えるようになってきた。一生懸命話す斉藤さんの姿が輝いていて、私はもう涙ですっかり目がかすんでしまいました。
ゆっくり成長すればいい。引きこもったことは本当の人生の目的を見つけていくチャンスを与えられたと思えばいい。効率のいいことや経済性を高めることだけを優先してきた日本の社会は、たくさんの青年を疲れさせ、生きる本当の喜びを失わせてしまっています。斉藤さんのメッセージを私達は謙虚に受け止めたいと思います。そして心の居場所を用意しておきたいと思います。            
(松浦幸子)