もうすぐ本番 伝えたい思いをうたにして
うたと伴奏が共鳴しあって
35周年を祝う会の舞台に向けて、昼食会の後や夕食会の前後、メンタルヘルス市民講座の前等に、みんなでうたの練習をしています。又、プログラムの中で、お客様に聴いていただいたり、一緒に歌ったり。先日の特別紹介会では、第一部のメンバーのリカバリーの語りとうたを10曲、川村尚也先生と大阪公立大学大学院生に聴いていただきました。メンバー同士が声をかけあって自主練をしたり、メンズグループの男性たちが青木さんのピアノに合わせて、一生懸命に声を出す練習をしている姿も見られます。
伴奏には、メンバーの青木紀子さんのピアノに、市民の細田伸昭さんと、増田さんがギター、国立音楽大学大学院生の松浦野歩さんがキーボード、メンバーの根本章子さんがウクレレを弾いてくれました。
伴奏者の方々と練習を重ね、語り合いを重ねるうちに、伴奏と歌声が次第に響き合うようになってきていることに感動しています。「午前中は伴奏者だけで練習しましたが、午後はメンバーのうたが合わさることで急に生き生きとしてきましたね。互いに共鳴しあう関係にあるのではないでしょうか」と細田さん。
クッキングハウスの10周年の時に0歳で参加した松浦さんの孫の野歩さんは、「演奏を通じて皆さんと対話ができたように思いました。弾く度に、思いのこもったうたを聴きながら、どんな思いでこの詞が書かれたのか想い、刺激を受けています。一緒に音楽をつくっていく、まれな機会と思っています。増田さん達とのかけあいは、普段できない楽しい経験です。練習を重ねるごとに一体感が出てきて、本番は会場のお客様とも一体感が持てるといいなと思います」と話してくれました。
「うたは、人と人との関係です。みんなが客席の人にどう伝えていくか、誰かに『伝えていく』練習をしていきたいですね」と増田さん。どうぞ楽しみにしていて下さい。(井出歩)
動くクッキングハウスin金沢・小松
対話を続けることの大切さ
もう15年も続いてきた金沢の上荒屋クリニック“えがお”と紅茶の時間でのSSTのワーク。ソーシャルワーカーの馬渡徳子さんと水野スウさんがきめ細やかで丁寧な呼びかけをし続けて下さったお陰です。参加者は市民の方々に加え、福祉の援助職の方々や学生さんにも広がってきました。そして去年からは、小松市にある称名寺の佐々木裕子さんもお寺でのSSTワークを、と引き受けて下さったのです。称名寺には「不戦の誓い」が堂々とした書で刻まれています。
佐々木裕子さんに「笠木透さんも、よくコンサートに来てくれましたよ」と教えてもらい、びっくり。今は亡き笠木透さんが称名寺さんと出会う道をつけてくれたのでしょう。良い気の満ちた広い寺の本堂で一日のワークをすることができました。お昼はスウさんのおいしい手作り弁当もいただきました。ありがとうございます。 (松浦幸子)
<水野スウさんの感想文より>
今年のワークは、語り合うことの大切さ。前半は二人一組になって、心も耳も集中して相手を「聴く」ことのワーク。こっちからは口を差しはさまず、訊かず、その人が話し切ることを保障する。それって、普段の会話の中ではなかなかできてないこと。集中して聴いて、聴いたばかりの話を、短い言葉でサマライズ(要約)する、これがなかなかに難しい。短く表現して、短く具体的に一つほめる、っていうのもまた、練習が必要だなあ。そして、語ろうとしてもまだ語れないでいる人達のことも、同時にいっぱい考えた。
ラブレターゲームを久し振りに。名前をひらがなで書いて、一文字づつ、その音から始まる短いフレーズを皆で考えて言って、お手紙にする。できあがったら、それを声に出して読んで、その人にプレゼント。このゲームを大好きになったメンバーさんがいて、彼女はこのゲームをクッキングハウスのレストランに見えるいろんなお客様に繰り返しすることで、自分の気持ちの言葉を増やしていったそうです。そういえば私も彼女からしてもらったことあったなあ。このゲームは短いフレーズでするのがコツ、ネガティブな言葉でなく、気持ちのいい言葉のつらなりを。
自分のいいところ、好きなところはこういうところです、と私が私をほめる、自分を認めて肯定してあげるワークもしました。「この際ですから、明るく、遠慮しないでいっぱい、あなたのいいところ、堂々と言ってみて下さい」という松浦さんの言葉に背中を押されて、一人一人、順に言っていく。私のいいとこ――そうだな、ちいさなうれしいを見つける名人、センス・オブ・ワンダーを持っていること、難しいことをスウ語に訳すところ、人のいいとこめっけの名人、一人のチクチクタイム(縫いもの)が好きなとこ、かな。一人一人のそういういいところは、その人のstrength、強み。その強みを自信もって大事にしていくことがリカバリーにも繋がっていく。日本語で言う「回復」は、元通りになることだけど、「リカバリー」はちょっと違う。その人が自分らしく生きていけるよう、人生の希望を叶えていく、そのプロセス一つ一つを大事にしていくこと、と松浦さん。
前日のお寺でも出たことだけど、老いていくお母さんとの付き合い方、おばあちゃんとの付き合い方、についてのこと。人は誰でも歳をとると、心に残るイメージ「感情残像」は、良かった、か、嫌だった、かの両極に別れがちなもの。そのことを対するこちら側がちゃんと分かっていたら、対応や言葉掛けも違ってくる。できるだけ、よかった、って感情を心に残してもらえたらいいですね。個別のSSTの課題の時、「人と問題を切り離す」ということを今日も教わった。今、自分の困っていること、もやもや、ぐちゃぐちゃ、していること。上手く言えなくても何とか松浦さんに話してみる。そのモヤモヤや悲しみを共感してもらえた上で、松浦さんから、「そのことはあなたの問題じゃないですねえ」、「そのことに関しては問題が別ね」と、交通整理してもらう、すると新たな視点に気づける。「あなたが一番困っているのは、このことかも知れないね、それに対してこういうことが今、できるかも。じゃ、それを練習してみましょうか」――という風に進んでいくSST。
この日もまた、話し切る、聴き切る、の練習を、フィンランドの精神医療で採り入れられているオープンダイアローグのやり方に学びつつ、やってみる。話すことと聴くことをきっちり分ける。さえぎられない安心感があると、たった5分でもこんなに気持ちの深いことまで話せるんだ、という驚きと感動を体験する。こんなワーク、もっと日常でも活かしてみたらいいな、って思った。やってみようか、って友達同士でも、家族でも、試してみたらいいかも。