クッキングハウスからこんにちは No.204
(記事の一部抜粋)

2022年6月6日発行

 
総会報告
35周年を祝う会に向かって今年も励んでいきます

5月21日(土)、応援してくださる皆さんと対面しての総会は、実に2年ぶり。直接、昨年度の報告と今年度の計画の発表ができたことは、とても嬉しいことでした。就労し、勤続6年で表彰された齊藤敏朗さんと、昨年11月に調布市より社会福祉功労賞を受賞した松浦さんが議長団です。齊藤さんの頑張りは、メンバーたちの励みに、松浦さんの受賞もみんなの喜びでした。
昨年度は、コロナ禍にあっても、いつもと変わらず活動を続けてきたことや、通ってくるメンバーの悩みや苦労は、制度の枠に収まるものばかりではないため、生きることそのものを応援してきた1年でした。その中でも、16曲の歌ができ、35周年を祝う会で発表しようと明るく練習に励んでいますと松浦さん。北海道から来てくれた樋口みな子さんは「クッキングハウスのような取り組みは、楽しく、信頼できるからみんなが集まる。通信の内容の濃さにも出ています。全国に伝えたい。地域では食堂も、どこも苦戦しているのに、売り上げを上げるのもすごい。35年の活動に敬意を表します」と励ましの感想を頂きました。府中の浅田さんも「35年、一つひとつの積み重ねあっての事業ということが、よくわかりました」と取り組みを評価してくれました。
私たちスタッフも、事業運営とメンバー支援の両面での努力をしながら、メンバーと一緒に元気に活動していきたいと気持ちを新たにしました。さあ、いよいよ35周年です。参加協力券の準備もでき、総会当日から先行で、皆さんの手にお渡しすることができました。                         (事務局 田村陽子)


親子対話で記念講演
~リカバリーと対話は友達~


今年の総会での記念講演は、水野スウさんと娘の中西万依さんとのオープンダイアローグ形式の対話で初の試み。万依さんは仕事で無理をしてしまい、十分な食事や睡眠をとらない中で、昨年の8月にクモ膜下出血で救急車に運ばれ入院することになりました。幸い後遺症は無く退院できましたが、心が元気にならず不安感があり、充電期間としてクッキングハウスのメンタルヘルスの学習会に参加してくれるようになりました。そこで発見したリカバリーについての考え方やSSTの魅力などを、スウさんと親子対話をしながらお話ししてくれました。
クッキングハウスではプログラムの始まりの気分調べ、最後のシェアリングなどで必ず一人一人が今の気持ちを言葉にしていきます。万依さんは参加を重ねるごとに、気分調べもシェアリングの言葉も深まっていくと感じたそうです。「自分の今の心の中にあることを人前で言葉にすることを繰り返すことで『今、私は何を感じているか』気持ちの確認になりました」また、自分の言葉を発するワークに参加すると、身体があたたかくなるのを感じました。メンバー達が「万依さん、こんにちは」と名前を呼んで挨拶をしてくれるので、「一緒に学ぶ仲間として認めてもらったのが嬉しかった」
SSTで出す課題では、「困っているのはわかるのだけれど、具体的にどうしたらいいのかわからない課題」もあり、松浦さんの質問に答えていくうちに「形が見えないものが、少しずつ輪郭が見えてくる」。「今、あなたが練習したいことは何?」と松浦さんが対話していくと「モヤモヤしているところに、キュッと焦点が当たってくる」。皆から「私はこうしたよ」と体験から気づいた話がいくつか出てきて、課題を出した人が選んでいく。「そのやり方自体から可能性が広がってくる」「自分の思っていなかった提案がたくさん出てくる」「一人で考えなくていいんだ」「それいいかも!」と希望を感じるのです、と万依さん。
「ここに居る人を信頼して、自分の困っていることを認めて、信頼する人に開くことができるのが、すごい!」「それが希望だし、自分が思い浮かばなかったことがたくさん出て、課題を出した人が選び、途中その人のアレンジが入ったりして」SSTに初めて参加した新鮮な感動が、万依さんのみずみずしい感性で生き生きと伝わって来ました。SSTを当たり前のように行っている私達にとって、SSTの可能性を再認識する機会になりました。
「松浦さんから『回復』は、元の状態に戻ること。でも、『リカバリー』は病気になった自分を認めて、日々、普通に暮らして夢や希望を叶えていくプロセスそのもの、と言っていました」「私は、『どうしたら普通になれるのだろう?』と考えていたけれども、『できないことがある私が、楽に生きていくにはどうしたらいいか考える』ようになったら、何かが変わり始めた」
クッキングハウスは「対話的な場」だ、と万依さん。主語を「私」にして話す「私メッセージ」を学びました。これは対話の原点になる言葉、考え方だと思います。「私」を主語にして話すことは、私が「個人」であることを自覚すること、一人ひとり感じ方が違ってもよい、それが当たり前ということ。国のために私があるんじゃなくて、「私は取りかえのきかない存在として、何よりも大切にされる、というのが憲法13条です」
ウクライナへの戦争が始まって、「日本も強くならなければいけない」「個を捨てて、国のために貢献したい」等、日本の空気も変わってきている。でも、自分を捨ててしまったら、大きなものがあらぬ方向へ行くと誰も止められなくなるのは、歴史で繰り返してきています。「自分が自分であること」、「自分を信じること」は平和な社会をつくっていく上でも、必要不可欠なものなのです。
「対話の可能性を見つけていくということで、次に会った時に『話そう』と繋いでいくことが大事です。ここで結論を出して『終わり』ということはないんですね。これからも2人の対話を聴きたいな、どんな成長をしていくのだろう、何を発見していくのだろう、というのが楽しみなんですよね。世界でつらい戦争が起きて、人が死に、逃げ惑っています。言葉を尽くして対話を続けられないだろうか。小さな居場所から『対話が続けられるんだよ』と伝えていきたい。そういう願いも込めて、お二人に対話を続けていただいてよかったですね」と松浦さん。                                                (井出歩)
<参加者の感想>
スウさんの受け答えで、万依さんが伸び伸びと自由に話していたのが印象に残りました。リフレクティングすることで、そこで何かが広がり、それがお二人に影響していて、豊かで面白いと思いました。(西村さん)
2人の対話を聴いていて、対話する中で掘っていくと金(きん)が出てくるみたいに、素敵な言葉がいっぱいあって、それに勇気づけられました。対話って人の中の宝物を探し出してくれるのか、それがリカバリーになっていくのかな、と感動しました。自分の中を素直に話す万依さんの言葉、素敵だと思いました。(細田さん)






<<ホームへ戻る

<<通信一覧ページへ戻る