クッキングハウスからこんにちは No.197
(記事の一部抜粋)

2021年4月5日発行

 
3つの居場所から

<レストラン・クッキングハウス おいしいね、と笑顔いっぱい>

街中がコロナウイルスの影響で沈んでいた2020年度でしたが、クッキングハウスのレストランは、メンバーや市民のお客様でいつも賑やか。換気や手洗い、消毒もしっかりとして、毎日開店しています。今年も、各地から旬の野菜をたくさん送っていただいたおかげで、豊かなメニューになりました。スーパーなどには出ていない白菜の花芽は、菜の花のように可愛らしくて柔らかく、甘みもあり、料理も楽しくできました。
残念ながら、団体での紹介会の学習会が次々と延期や中止になったり、遠方から来ることのできなかった方もいて、例年に比べると売上は少し低迷したものの、ご近所にお勤めの方やお子さん連れのお客様には毎日のように利用していただけました。また、テイクアウトのお弁当も準備して、喜ばれています。
赤ちゃんから年配の方まで、お客様も迎える私達も、様々な世代が交流する場にもなっています。お母さんと一緒に来てくれる3歳のあいねちゃんは、メンバーのあい子さんが大好きです。こんな時だからこそ、居場所の力が発揮されるのかもしれません。美味しくて、心もおなかいっぱいになってほしい。ちょっと不思議で、どこかホッとできるレストランは、今日も笑顔があふれています。 (田村陽子)

<クッキングスター 仲間とつくる夕食会と学びあい>
スターの食事会も、各地からの新鮮な野菜や果物、お米等のおかげで、ゆたかな食事がいただけています。私たちの活動を応援して下さる皆さんの気持ちも一緒に感じながら、にぎやかな、あたたかい時間になっています。火曜日は、料理上手なボランティアさんと一緒に、少し手の込んだ料理を楽しく作る日。先日は、春巻きや太巻きを作りました。木曜日は、料理ベテランメンバーと自分で作れるようになりたい料理を作る日。土曜日は、松浦さんの手料理を一緒に作りながら、ティールームやレストラン、就労しているメンバーも一緒に、大勢でにぎやかに食べる日になっています。先日のミーティングでは「一人暮らしの野菜不足が解消できます」「コロナ禍でも開いていて安心しました」「家だと一人なので、誰かと食べられる機会として大事にしたい」「料理が覚えられます」と語ってくれました。SSTやメンタルヘルス市民講座、市民大学等の学習プログラムも変わらず市民と共に学べていますが、このような状況だからこそ、心を閉ざさずに一緒に語り合い、学び続けることの大切さを熱く語ってくれる市民が増えていることも最近の特徴です。今までみんなで当たり前のようにやってきたことが、生きていく上でいかに大切であるかということを実感している毎日です。 (井出歩)


<ティールーム ~身近な人に贈り物プチギフトはいかがですか~>
最近のティールームでは、祝島の甘夏や因島のはっさく、土佐の文旦など旬の柑橘をたくさんいただいたので、寒天ゼリーやタルトケーキなどをSSTやメンタルヘルス市民講座などのデザートを作り、皆さまに喜ばれました。作っていると、さわやかな柑橘のいい香りに包まれます。1年の振り返りとお疲れ様会をメンバーとスタッフで行いました。コロナウイルス流行の影響により、売上は昨年より下がってしまいましたが、日々の焼菓子づくり、販売、納品などさまざまな活動を各々が工夫し、頑張ってこれたことが共有でき良い振り返りができました。
今回の通信に、『プチギフトのご案内』を同封させていただきました。小さな袋にクッキングハウスの定番のクッキー、フロランタンなどを詰め合わせたものをお作りいたします。お友達や職場の方などに、小さな贈り物としていかがでしょうか。ご注文をお待ちしております。(阿部真子)


第11期メンタルヘルス市民大学
一緒に生きていくために必要なことは― 

第4回 共感性を養うマインドフルネスと当事者研究

当事者研究①  失敗しても大丈夫
米山さんは前の職場で上司にちょっとした間違いをひどく叱られ、そのストレスで妄想や幻聴が聞こえてきて会社を辞めることになり、そのことからクッキングハウスでの「笑顔であいさつをして、心から歓迎し合うこと」「朝、体調を確認して、無理のないペースで仕事をすること」「失敗しても責めず、できていることをほめること」「『次はどうしたらよいか』のアドバイスがあること」等が回復していく上でいかに大切であるのか分かった。今まで失敗することを恐れ新しいことにチャレンジできなかった米山さんが「失敗は成功のもと、誰でも最初は失敗するから気にしないで大丈夫」と思えるようになった、と発表してくれました。
当事者研究② 怒りに向き合う
家富さんの研究は「怒りのとらえ方について」。「私は、自分の負の感情を外に出すことができずに、心の病気になってしまった。でも時には自分を守るために怒らなくてはいけない。」そして、最近怒らないといけないことがあり、「私は傷つけられて悲しい」ということを伝えたけれど、その反応として、「自分からあふれ出る感情に押しつぶされそうで苦しかった」。そこで「怒りの感情についてみんなでシェアしたかった」ためにこの当事者研究を書くことにしたそうです。「怒りはエネルギーに交換することができる。」「私の中には怒りがあることを自分で認めてあげられれば、もっと上手く怒れるようになるのでは。」「怒り」と真摯にそしてユーモアも交えて向きあっているこの研究は、私たちが自分自身の怒りと向き合うヒントと勇気を与えてくれます。
共感性を養うマインドフルネス
「マインドフルネスは、今、この瞬間に生きている自分自身に気づき、自分の感覚に注意を払っていくことで慈悲の精神を養っていくこと。そのことが他者への共感の精神を育てていくのです。人と人が大切にしあえる、平和な社会につながっていくのです。」松浦さんの講義「共感性を養うマインドフルネス」は、途中3回の瞑想とペアで行うシェアリングのワークも織り交ぜながら行われ、自分自身の心の変化を丁寧に見つめ、相手への共感を体験しながら学ぶことができました。 (井出歩)

第5回 共働学舎の物語
人間は競争するために生まれたのではない
雪のため延期になっていたのですが、ようやく実現し、長野県小谷村から共働学舎の宮嶋実佐紀さんを迎えることができました。1973年、今から48年前、自由学園の教師をしていた宮嶋真一郎さんが競争社会を超えて自然の中で共に働き、共に学び、1つの家族のような学舎をつくりたいと始められました。弱い人達もみんな一緒に、人が生きるための営み、食、住、衣、を一から始めたのです。
宮嶋実佐紀さんは教師になろうと障がい児教育を学んでいた学生の頃、障がいを持った人達と一緒に生きていけないものだろうか、と教育に疑問を感じ、テレビで共働学舎の人たちが、誰がスタッフでメンバーか関係なく一緒に働き生きている姿を見て感動し、共働学舎に飛び込んだのでした。そこで宮嶋信(まこと)さん(宮嶋真一郎さんの次男)と出会い、結婚し、共働学舎の人となり、子育てをして35年になります。たくさんの苦労もしてきたことでしょうが、笑顔のとても可愛い実佐紀さん。私達も小谷村でのメンタルヘルス市民大学スペシャルで毎年お世話になってきましたから、今度はクッキングハウスにお招きできて、とても嬉しいことです。江田さんから届いたばかりの野菜いっぱいのランチを食べながら、「クッキングハウスに来ると共働学舎と同じ匂いがするの」とニッコリ。
共働学舎の日々の活動のスライドは、薪で暖まる囲炉裏、ヤギやニワトリやネコ、屋根の雪おろし、一本ぞり、田んぼの苗床づくり、田植え、田んぼの中を遊ぶ鴨の群れ。稲刈り、はざかけ、水車小屋づくり、茅を育て屋根の修繕。昔から私達日本人が家族中で手作業をして暮らしてきた懐かしい農業の風景です。いろんな人達に体験してほしいと、
子ども合宿や大学生の実習、外国からのボランティアも受け入れています。そして自然
と共に生きる営みの中で自分を見つめる時間になってほしいと願っています。人が生きるための働きの中ではどんな人も大事で、誰が障がい者なのかなど関係ありません。こうしなければいけないという囚われをはずし、互いの弱さや違いを認め合わないとやっていけない生活。むしろ、共働学舎が自然に逆らわないでゆっくりと、自給自足を目指してやってこれたのは、弱い人達がいてくれたからだといいます。
「それでも競争する仕組みの中に入ってしまっている自分もいます。働いて得られた収入も、今、必要な人に渡して分かち合い、皆の幸せを願って働こうとしていても、経済優先の考えで育った今の人は「これだけ働いたから、働いた分を欲しい」と言います。また、24時間一緒の生活には耐えられないと「自分の時間が欲しい」と若者は言います。それでも悩み葛藤しながらも共働学舎にやってきた人を迎え、去っていく人を見送り、ここで自分を取り戻し、生き方を考えてみる時間になったら、と願っています。」 (松浦幸子)
お客さまのシェアリングより
◎何をするにも失敗を恐れてしまって、結果、すべてできなくなっています。狭いアパートでパソコンを見ている時間の方が長くなっています。「一度やってみたら経験者だよ」の言葉が胸に響きました。お会いできて嬉しいです。共働学舎に行ってみたいです。(感動の涙あふれて語るメンバー)
◎人間は競争するために生まれたのではないのに、いつの間にか人と較べてしまっていた自分。一人一人違う。ありのままでいいのですね。
◎「生活には困っていない。米も味噌もあるし、みんないっぱい食べられるし。お金はないが、買い物しないから支出も少ないし」と話す宮嶋信さん。生きる哲学者ですね。




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