クッキングハウスからこんにちは No.195
(記事の一部抜粋)

2020年11月30日発行

 
動くクッキングハウスin金沢

紅茶の時間&上荒屋クリニック「えがお」
今年で13年目になるSSTコミュニケーション・ワークショップ。待っていてくれる人達がいる。会う度に素敵な表情になって、共感する力も深まっていくステキな方々。紅茶の時間という心が豊かになる環境を38年かけてつくりあげてきたから、充実したワークになるのだ、と実感しました。    (松浦幸子)

スウさんからすぐにレポートが届きました
今年は、コロナ禍の今だからこそ学びたい、具体的なヒントがいっぱいつまったワークプログラムでした。ほんの少しおすそわけを。
「つらい」とか「しんどい」って言葉、よく口にしますよね。でもいつもこの単語だけだったら、聞いた方はよく理解できない。的確な言葉で、うまくその時の心の状態を家族に伝えられたらどんなにいいだろう。だけどきもちにぴったりの言葉ってなかなか見つからない。そのうちイライラしてきて家族にあたったり、なんでわかってくれないの!と相手を非難したり。そんな自分が情けなくて、自己嫌悪したり責めたり、さらに否定的な考えがぐるぐるぐる...。
そんな悪循環を断ち切るのにも役立ちそうな、「つらい、しんどい時の自分のきもちを伝えるための、豊かな言葉を探してみよう」というワークをしてみました。自分の今のきもち、または過去につらかった時のきもちの言葉を、それぞれがワークシートにかきだしています。書き出した後、ペアになった人とワークシートを交換しあって、相手の書いた言葉を、きもちをこめて読みます。AさんがBさんのきもちの言葉を読んだら、次はBさんがAさんの書いた言葉を読む番。自分の書いた言葉を人に読んでもらうって、ふしぎなきもちです。今の/あの時の、自分のきもちをわかってもらえたようなきもちがして安心する。と同時に、自分のことを、ああ、そういうきもちなんだ、あの時そういうきもちだったんだ、と客観的に眺められる。人にわかってもらうだけでなく、自分のきもちがわかってくる、自分のきもちに気づく、そのための練習をしているんだ、と気づいていく。
松浦さんが「いつまでもただ“つらいんです”の言葉にとどまっていると、成長できないのよね。こういうワークをすることが、言葉を磨く練習、心に添った言葉を探し当てる練習になるんですね。自分で発した言葉は本物だから、それを誰かの声で読んでもらい、それを聴くことでふしぎに感動するのです」と。
<金沢港の夕陽を見ながら、ひだまりの会の10周年を喜びあう>
2日目のワーク終了時間の4時。金沢メンタルヘルスボランティアひだまりの会の畠山栄美子さんが迎えに来てくれました。コロナ禍でボランティアの方全員が集まっての10周年の記念の研修会はできない代わりに、2人で振り返りをしましょうということに。金沢港の新しいターミナルのテラスで刻々と沈んでいく太陽を眺めながら、この10年のボランティアの会の成長を語り喜び合いました。居場所が定期的に開かれるのを楽しみに待っていてくれる当事者達。謙虚に話に耳を傾けるボランティアの方々。10周年のごほうびには、クッキングハウスのみんなで心をこめて作ったクッキーギフトでした。クッキングハウスの活動がボランティアの会の方々の支えになっていたことが何よりもうれしいことです。私達も励まされているのです。  (松浦幸子)


レストラン、賑わっています

秋晴れの良いお天気と共に、レストランは沢山のお客様がいらっしゃっています。賛助会員さんやメンバーのご家族から秋の野菜などを沢山送って頂き、感謝しております。
11月2日、月に一度の松浦さんシェフデーでは、新潟の亀田よみ子さんから送ってもらった里芋と、亀田さんのお孫さんが小学校で作ったもち米に、鶏肉となつめなどを入れて大鍋に50人分のサムゲタン風料理を作りました。小学生たちが作ったもち米は甘く、滋養を感じる優しい味に出来上がり、身体がぽかぽかと温まりました。
私達スタッフが月に一度、新しい料理にチャレンジする研修日では、焼売ときんぴらごぼうを作りました。あい子さんが差し入れて下さった帆立の貝柱を使って旨味を出すことができました。240個の焼売をみんなで包む作業も楽しく、美味しく作ることができました。店内を飾るキミ子方式の絵も、赤い柿が並び、秋を感じます。そして、親子連れのお客様にも沢山来て頂き、レストランは賑やかな声が響いています。「子どもは社会の宝」というだけあって、お子さんの成長からは生命力を感じ、思わずにっこりしてしまう、心地良い循環がうまれています。これからも「おいしいね」と沢山の笑顔が見られる料理をみんなで作っていきたいです。 (河原麻代)


第11期メンタルヘルス市民大学レポート
  

第1回 まず命を救え!アフガニスタンの人々に寄り添い続けた中村哲さんの仕事

今年度のメンタルヘルス市民大学のテーマは、「一緒に生きていくために必要なことは」。講師の松浦さんは「今、私たちはコロナ禍の中で、不安と隣り合わせで毎日を過ごしています。こんな時だからこそ、助け合って一緒に生きていくために必要なことは何かを源流をたどるように考えていきたいですね」。第1回の講座で、DVD「アフガニスタン旱魃の大地に用水路を拓く」をみんなで観ました。医師である中村哲さんは、1984年にパキスタンのペシャワールに赴任。ハンセン病治療や難民のための医療など、ずっと弱い人たちの立場に立った医療をされてきました。
2000年からは、大旱魃のアフガンの地に、水源確保のための用水路を一から切り拓く灌漑活動を始めました。医師であるにもかかわらず、砂漠の中で自ら重機を操り、巨大な石をクナール川に置き、何度も失敗を繰り返しながらも諦めず、江戸時代からの治水技術、九州筑後川の山田の堰の技術から学び、水の流れを変えて25㎞におよぶ用水路を完成させました。水の行き渡った砂漠が緑の大地になり、トウモロコシや野菜が育つようになりました。「今、必要なのは戦争ではない。食べ物なのだ。飢えないことなのだ」という強い決意。「一人の、今、困っている人を救うこと。その積み重ねが平和なのだ。決して武力で平和は来ないのだ」。質素な姿の現地の人々が、汗まみれ泥まみれの作業をしている頭上を、アメリカの戦闘機がかすめていく映像には胸が締め付けられました。昨年12月、活動中に命を落とした中村哲さん。その志や活動は、今も引き継がれています。
中村哲さんはクラシック音楽が好きで、いつもかたわらに置いて聴いていたそうです。この日、ピアニストの鈴木たか子さんにお願いして、特に好きだったというモーツァルトのトルコ行進曲を弾いてもらうことが叶いました。心を込めて弾いてくれる鈴木たか子さんの繊細で優しい、そして力強いピアノの音。トルコ行進曲で涙があふれ出て、しばし絶句していた松浦さんの言葉「トルコ行進曲が私たちの思いを乗せて、きっと天国の中村哲さんに届いたことと思います。」 (田村陽子)


第2回「カレーライスを一から作る」上映会 私たちはいのちをいただいて生きている

「グレートジャーニー」でも知られている関野吉晴さんが、大学のゼミで学生たちと一杯のカレーライスを作るまでの9ヶ月間ものプロセスを記録した映画を皆で観ました。なんと、カレーライスの材料のお米も野菜もスパイスも肉も塩も、お皿やスプーンまでも最初から作っていくのです。塩は海から、お肉も鶏を育てて、屠殺して作るのです。
カレーライスが出来上がるまでのプロセスを私たちも、学生たちとわくわくしたり、ハラハラしたりしながら一緒に体験しているようでした。そして、関野さんが穏やかに語る「人間は、いのちを食べて生きているのです」という言葉が、深く響いてきました。「私は見たくないものを見ないようにして生きてきたと思います」という参加者からの感想は、現代に生きる私たち姿そのものです。「ひとつの命について考えることも必要だが、私たちも一員である生態系全体のことを考えることが、さらに重要なのだと思う」という関野さんのメッセージは、漠然とした行き詰まりを感じている私たちに、これからを生きていく中で、大切な視点を教えてくれました。
映画の後、カフェスロー代表の吉岡淳さんが、お話をしてくれました。地球は約46億年前に生まれ、生物は約38億年前に誕生し、ホモ・サピエンスは、やっと約20万年前に生まれたのに、ずっと後から来た人間が他のいのちに役立たないことを好きなようにやっていること。人間がいのちをいただいて生きていて、他の生き物がいなければ生きていけないのに、感謝を忘れ、いのちから遠いところでいきていること。いのちに無駄なものはなく、全ての生き物は関連して生きていること。そして最後に「種を蒔いて育ててみるといいですよ。種から芽が出ることは、奇跡的なこと。いのちがすごいことが、もっとわかりますよ」と力強く話してくれました。  (井出歩)


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