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第9期 メンタルヘルス市民大学 「弱さに寄り添う」
第5回 『夢の間の世の中』DVD上映会とシェアリング
30歳で殺人犯として逮捕され、48年間一貫して無実を訴え続け、
獄中にあった袴田巖(はかまだ いわお)さんに、
2014年3月27日、静岡地裁は再審開始を決定。
「証拠は捏造」「これ以上の拘置は、耐えがたいほど正義に反する」
という内容の画期的なものだった。
いつ来るともしれない死刑に怯えながら、
長年月、自由を奪われていたために、
東京拘置所から解放された袴田さんは、
反応精神病の一つである拘禁精神病になっていた。
姉の秀子さんは、釈放された兄を明るい陽射しのマンションを用意して、
ゆったりと自分のペースで暮らせるシンプルな環境をつくり、やさしく寄り添い続ける。
一日中、部屋の中を歩き回り、妄想の世界で独り言をつぶやき、
会話も難しい兄に「やりたいように、好きに暮らせばいい」と明るく、
淡々と見守り続ける秀子さんの姿。
その堂々とした、どこまでも大らかな生き方に感動する。
「巖が生きていたってことが、何よりですよ」と語る姿。
袴田さんの人間としてのなんとも味のあるおもしろさ、
姉の秀子さんのたくましい明るさと大きなやさしさ。
そんな姉と弟の生活や、
あたたかく見守る人たちを撮り続ける監督の金聖雄(きむそんうん)氏の眼差しの深さ。
多くの人たちの応援で出来上がった
ドキュメンタリー映画『夢の間の世の中』を皆さんと一緒に観て、
シェアし合えることが、私のかねてからの願いでした。
メンタルヘルス市民大学「弱さに寄り添うことの意味」のテーマのもとに、
実現できて、とても嬉しいことです。
映画の中で、袴田巖さんがリングにあがったときの、
観衆に手を振っている堂々とした誇り高き姿に、
涙が止まらなくなってしまった。
あたたかく見守る環境の中で、
だんだんと優しい表情を取り戻していく変化にも泣いてしまう。
人間の尊厳のドラマを皆と一緒に観れた幸せ。
(松浦幸子)
(松浦幸子)