【 も く じ 】
巻頭言:命の讃歌の夏
命の讃歌コンサート~福島を忘れない~
メンタルヘルス市民大学
パパラギソングで心あつめて
訃報
スペシャル中国東北部の旅
初夏のメンタルヘルス市民講座修了
夏の日帰りバス旅行
仲間紹介・各地からありがとう・賛助会御礼
文化学習企画
動くクッキングハウス
命の讃歌コンサート ~福島を忘れない~
9つの団体が出演するコンサート、お互いに、忙しい現場仕事を持ちながらも、スケジュールを合わせ、話し合い、準備を重ねてきた実行委員会。クッキングハウスで実行委員会が行われたときには、ランチも食べていただいたり、金曜日のうたの練習日にあわせて、コットンハウスのメンバーとランチとうたで交流会を持ったり、増田康記さんにも何度も練習日にあわせて、岐阜の郡上八幡から指導に来ていただきました。さらに、当日の舞台監督もお願いすることになり、様々な団体が最大の表現ができるように舞台をつくってもらいました。
前日の最終練習には、笠木由紀子さんも「みなさんの練習を見ていたら、本番も応援したくなりました」と、笠木透さんの生まれた岩村町の銘菓「松浦軒のカステラ」を陣中見舞いに持って、駆けつけてくださいました。みんな気持よくうたって、ペンペン草で踊って、カステラを食べて、「これで明日の本番は大丈夫!」ということになりました。
いよいよ当日。府中の森芸術劇場ふるさとホールで、9時から舞台の仕込み開始。福島のいわき雑魚塾のみなさんも到着しました。ひと安心です。
ロビーでは、店の準備。岩手県大船渡津波伝承館から、甘ホタテ最中やおまんじゅう、福島復興応援の桃、宮城県名取市箱塚の仮設住宅のおばあちゃんたちが布でつくった可愛い桜地蔵さん、いわき雑魚塾のCD「でれすけ原発」、笠木透と雑花塾の東日本大震災・福島への思いをうたった「私の子どもたちへ」・「豊かな青い海」などのCD文庫、紫金草合唱団の絵本や詩集、コットンハウスの手作りの袋、カンタービルの手漉きの紙で作ったカードや葉書。そして、クッキングハウスのコーナーは手作りクッキー・ケーキ、たくさんのメンタルヘルスの出版物。
たちまち、ロビーはにぎやかな物産交流スペースになりました。なんと、クッキングハウスのクッキーは、メンバーたちの明るく、積極的な呼びかけのおかげで、いち早く、売り切れたのでした。
司会の松浦はタイで買った黄色の坊さんカラーの伝統衣装に着替えて、猛暑の中を来て下さったお客様を笑顔で迎えました。
オープニングは、“福島応援on Song”。2011年3月11日の東北大震災の夏から、音楽の力で福島のことを応援したいと、4年間、毎月11日、14~15時まで、府中の街頭で歌っています。合言葉にしてきた「福島を応援することは、日本の未来を応援すること」を舞台からアピールしました。
続いての“麦わら帽子の会”は、かつての少女たちが麦わら帽子をかぶり、構成詩「福島の春」を朗読。ヒロシマ・ナガサキの被爆した母や子が綴った悲しみや怒りや無念の思い、沖縄の地上戦での悲劇、中国侵略への謝罪、再び戦争への道を歩んではならない、と朗読を通して伝えてきた会です。会場には、詩集「哀悼と怒り~桜の国の悲しみ~」の著者、石川逸子さんも見に来てくださいました。
かたときも あなたが放さない
黒いビニール袋一つ
(そのなかで泣いている故郷
怒っている故郷) (「怒りの黒いビニール袋」より)
ふるさとを奪われた苦しみ、放射能におびえながら暮らす、やりきれない怒りを、私たちの問題として共有したいと静かに聴きました。
3番目の“府中紫金草合唱団”と“けやき混声合唱団”は、音楽を通して、「いのち」「平和」「反核」「友好」のメッセージを伝えたいと活動を続けてきた、力強く、まっすぐに思いを伝えている合唱団。つぶてソングより「街を返せ」、紫金草物語より「花に寄せて」、カンタータ「土の歌」より「大地讃頌」。
第1部の最後は、“ホットジェネレーション”で、グンと若い世代の登場。「子どもたちの身近にもっと芸術を」と、障がいをもった人も一緒にミュージカル公演に取り組んでいます。
第2部は“府中ドンパン楽団”から始まりました。難病の筋ジストロフィーと闘っている若者で構成された音楽集団で、リハビリの一環として、歌をうたって、結成41年目になります。オリジナル編曲「PURSUE MIND」とゆずの「雨のち晴レルヤ」。ボランティアのみなさんの支えで、車椅子に人工呼吸器をつけながら、まさに全身全霊でうたってくれました。小さな声に全身の耳をすまし、会場のみんなが心を集中して聴いてくれました。生きているってすごいことなのです。つらい状況を生きている人たちに元気や勇気をくれるのです。
コットンフラワーズのみなさんは、畑で野菜もつくりながら、スタッフとメンバーとで作っているバンドです。命の讃歌の取り組みを通して、クッキングハウスの私たちも交流するチャンスを持ててよかったです。「笑っていたいんだ」「ええねん」「サンサーラ」。元気な、ノリのいい曲を披露してくれました。
いよいよクッキングハウスの出番です。“最初から笑顔をつくって出て行くのよ”と声かけ。幸せの黄色い暖簾を持ちながら、舞台に並んだときは、とても和やかな雰囲気。いつものように大きな声で互いの声を聴き合いながら、伸び伸びと歌うことができました。「風のメッセージ」を”福島の人たちに届いてほしい”、という気持ちで歌い、「不思議なレストラン」はワルツのやさしいリズムで歌っていると、メンバーとスタッフの踊りが楽しそうに入ります。フォークシンガーの横井久美子さんに、「踊っている女性が良かったわよ」とほめていただけて、嬉しいことでした。
「私の子どもたちへ」は、いわき雑魚塾の皆さんも仲間入り。笠木透さんが40年も前につくったうたが、今また、必要とされているのです。祈るような気持ちで、
♪ 生きている 君たちが
生きて走りまわる 土を
あなたに残しておいて
やれるだろうか 父さんは (「私の子どもたちへ」より)
みんなとうたっているうちに、涙がこぼれそうになりました。
トリは、福島県いわき市のフォークグループ、いわき雑魚塾です。3.11の震災後、笠木透さんの歌をつくってみようの呼びかけで、創作心に火がつき、CD「でれすけ原発」を出版。福島弁で“バカたれ原発”の意です。方言のたくましさ、力強さ、そしてあたたかみを感じながら、元気いっぱいの「でれすけ原発」を聴くことができました。
♪ でれすけ でんでん ごせやげる
でれすけ 原発 もお いらねえ (「でれすけ原発」より)
命の讃歌に来ていただけて、本当に良かった。その土地で生きていく人が、その思いをうたで表現する説得力には、もう圧倒されてしまうのです。
エンディングは「ペンペン草」を増田康記さんのギターとうたで、会場のみんなと一緒にカチャーシー。福島応援on Songの呼びかけ人、ALSの難病を抱えた佐々木公一さんも舞台にあがっています。
♪ いつか原発が なくなりますように
いつか核が なりなりますように
いつか戦争が なくなりますように (「ペンペン草」より)
命の讃歌コンサート実施にあたり、たくさんの市民の広告の協力や賛同をいただきました。2015年府中市市民提案型協働事業として、府中市からの助成金もいただき、実現できました。ありがとうございます。実行委員のみなさんもご苦労様でした。これからも各地で、市民たちの“命の讃歌”が繰り広げられますようにと、祈っております。(松浦幸子)