クッキングハウスからこんにちは No.157

目次(青字の記事を抜粋してあります)2014年8月4日発行


もくじ
巻頭言:将来を考える会…1、動くクッキングハウス報告…2、笠木透さんコンサート…3、平和の暦コンサート、メンタルヘルス市民講座…4~5、メンタルヘルス市民大学、ハッピーアワー…6、マッシー連載…7、真鶴旅行、レストラン、ティールーム、賛助会御礼…9、文化学習企画…10、動くクッキングハウス、スタッフ募集…11、仲間紹介、各地からありがとう,お知らせ…12



動くクッキングハウス スペシャル
 第20回 全国経験交流ワークショップ in前橋 
  テーマ 出会い、広がり、そして社会へ


とても久しぶりの参加になる。SST参加皆勤賞の内藤浩子さんと小宮山あい子さんへのごほうび参加。スタッフの田村陽子さんとの4人の旅。
 懐かしい人達にも会えた。べてるの家の向谷地さんご夫妻と、当事者スタッフの伊藤さん。あい子さんは文通相手の伊藤さんに会えて大喜び。向谷地さんもクッキングハウスに行きたい、と積極的。「ハローお仕事ルンルンかるた」出版のことを話すと、11月に東京でおこなわれる当事者研究全国大会でぜひ発表してとすすめていただいた。ハローお仕事ミーティングの仲間でいい発表ができそうだ。
 前田ケイ先生にも再会。思わず手を取りあって感激。おとといまで浦河べてるの家でSSTをやっていて、昨日仙台に戻り、今朝前橋に、というスケジュールをとても元気にこなしておられる。
 「SSTの広がりへの期待 わが国の精神科医療の転換を成功させるために」と題した西園昌久先生のお話は深く、先を見通しておられる。
 ようやくアウトリーチ医療(訪問医療サービス)へと国の精神科医療が転換されようとしている。でも何よりも医療担当者には、当事者や家族との信頼関係を築くコミュニケーションづくりが求められる。
様々な課題解決の主体は当事者であり、家族だから、医療関係者にはSSTの基礎素養が求められる。つい、人の心は自分自身にだけ向いてしまうので、心の健康を回復するには、コミュニケーションの力をつけていくこと。ここにSSTの大切さがある。
 クッキングハウスでやっているメンバーとのいつものSST、家族のSST、そして市民の方も一緒のスペシャルSSTの実践が、西園先生のお話しで肯定されて、また現場に戻って新鮮な気持ちで取り組もうと元気になれた。
 2日目の分科会で、山﨑亨さんが「就労支援とSST」の講師をされ、特例子会社「大東コーポレートサービス」の社長としてSSTに取り組んできたことを熱烈に話して下さった。クッキングハウスでも学んでくれたこと、「元気になれるSST」のウォーミングアップがとても参考になり、2年間はウォーミングアップだけをやり続けたこと、その結果、職場が楽しくなり、休む人がいなくなったこと等、前向きに取り組めば、障害をもった人達が自信をもって可能性を広げる職場になることの豊かな経験をたくさん聞くことができた。
 時々は、たくさんの刺激をもらって、またやってみよう!と前向きな気持ちになれるチャンスが必要だ。これからまたスタッフやメンバー達と積極的にSST学術集会やリハビリテーション学会に出かけていこう。  (松浦幸子)

〈日常生活機能を支える認知機能〉
シンポジウムでは、群馬大学大学院の福田正人先生のお話を聴きました。
生活と脳を結ぶのが認知機能で、注意することや記憶の働きだけでなく、感情や情動、やる気も認知機能であること。だから、自分が他人の痛みに共感すると、痛みを感じる部分の脳も共感します。関心があり大切に思うことであれば、集中力が増して物事をよく覚えられるともいいます。価値意識を背景にしたやる気(意欲や動機づけ)に応じて、認知機能は変わることができるのです。だからこそ、認知と行動に働きかけるSSTは、日常生活を豊かなものにしてくれる優れたツールであり、リカバリーへの実現につながることが改めてわかりました。(田村陽子)


〈感想より〉
・浅見隆康先生のセミナーで自殺のことを取り上げていた。私も自殺未遂の経験がある。将来を悲観してのことだった。私はその後、様々な人の出会いによって、助けられている。だから今は、生きていてよかったと思っている。「ダルク」による琉球太鼓の演奏も良かった。あんな上手な演奏をするということは、よほどの心の葛藤があるのだと思った。(内藤)
・懇親会は夕日を少し残した時に始まりました。私は「エイサー」の手の踊りをしてみました。上にあげて障子を開くように動かして下さいねと教えられました。太鼓は心に勇気と感動を与えてくれました。学習して食事して、前橋から私は、また一歩歩き出しました。(小宮山)


〈レポート〉 初夏のメンタルヘルス市民講座修了 市民とメンバー達が共に学ぶ 

 6月1日から始まった、6回連続のメンタルヘルス市民講座が修了した。
 木戸さんと江田さんや安髙さん、伊藤さんは大張り切りで12時には集合して、夕食の準備をしてくれた。織座農園の野菜を手に取りながらメニューの相談、買い物、下準備。1時半には片付き、オープンキッチン台は講座の受付に早変わり。この集中した忙しさの中で、みんな料理の段取りがぐんと上手になった。
 今回の講座の特徴は、回を重ねるごとに市民の参加者が増えていったこと。そしてメンバー達の参加が多かったこと。メンバー達は自分が経験してきたことを、自分の言葉で、無理をせず語ってくれました。互いの語ることを共有しあい、仲間として尊敬しあうことができたのです。
これからの精神科医療・保健福祉の最も大きな仕事はメンタルヘルス。病気のあるなしに関係なく、その人が人間らしく生きていくのに障壁になっているものはなんなのかを知り、解決していくこと。ここにメンタルヘルスの学びの必要性がある、と「引きこもりを恐れず」で高岡健さんも書いておられます。

〈病気になった時つらかったことは?〉
・学生生活を送っていたとき、友達に病気のことを理解してもらえず、出来ないことを怠けていると思われて説教されたりした。
・周りが自分を馬鹿にして笑っているようで外にも出られず、苦しかった。兄も、どうしようもない弟だと言うし、理解してくれるのは母だけだった。通院がきっかけで外に出られるようになった。先生が「必ず治ります」と言ってくれたことが希望になり、作業所で仲間もみつかりました。
・心がバラバラになっていく感覚で引きこもった。何もできないので両親が様子を見に来てくれるのだが、束縛されている感じがした。母もクッキングハウスのSSTで学び、私をここにつなげてくれた。今は親との距離のとり方が大事だと思っている。

 参加者は、メンバー達が大変な状況を生き抜いて今ここにいることや、メンバーの純粋なやさしさに触れて、病気への偏見がなくなります。そして自分も心が自由になっていくのです。
 「みんなの苦労の経験が聞けて、深い理解になった。市民が自由に参加できる市民に開かれた学びの場がとてもいい。このやり方を続けてほしい」と吉成さん。


〈回復のきっかけになったことは?〉
・最初、何に悩んでいるのかうまく言えなかった。ここでは、小さなことでもほめてもらえる。私もSSTに課題をだし、ほめてもらい涙が出た。SSTで練習して家族ともうまく付き合えるようになった。そして料理も失敗しても大丈夫なのがうれしくて伸び伸びとできるようになった。
・ここでは自分の状態に正直で、自然体でいられる。SSTとセットで、物事を前向きに考えられるようになった。
・病院のデイケアからクッキングハウスに来て、ティータイムでは山手線ゲームをしたり、気分調べをしたり、コミュニケーションのチャンスがあることが回復につながった。あたたかい居場所に力をもらっている。
・メンバーになって、山あり谷ありの8年だったが、あれをしなさい、これをしなさいと言わず、私が希望を言うのを待っていてくれるのがクッキングハウス。今では週3回も通えるようになっている。両親のしばりが強いと苦しくなっていたが、SSTで父と目を合わせて話すことを練習したら、自然な話ができるようになった。


〈これからの人生への希望を語る〉
・地域の中で一生暮らしていきたい。
・ここで一生懸命働いて、自分の力にして、社会復帰したい。
・若い頃から病気で父母に心配をかけっぱなしだった。親亡き後、ひとりで生きていけるようになりたい。
・急がないことが大事。8年かけてメンタルヘルス講座にも参加できるようになった今の自分を認めたい。将来は就労したい。
・心穏やかな生活ができるようになりたい。


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