…総 会 特 集…
〈引きこもりを恐れず 高岡健先生〉
総会記念講演には、岐阜大学医学部の精神病理分野准教授・高岡健先生が、「引きこもりを恐れず」と題して講演して下さいました。62名の参加で、会場がいっぱいです。
私自身が、息子の不登校で悩んでいた時、「引きこもりというのは人間の生活や人生にとって必要なことだと考えています」、「自己尊重感を修復していく期間なのだから、それを保証してあげることが重要です」の考え方に、どの位、救われたことでしょう。社会への、いろいろな関わり方を無条件に認めていくこと、そして息子の中にある、生きようとするエネルギーを奪わないようにすること。母親としての姿勢を決めることができたのでした。
クッキングハウスの心の居場所をやってこられたのも、高岡健先生の考え方が、大きな安心感として支えになったからです。一人ひとり、出会ったメンバー達の、そのままを認めることができ、人生という長い尺度で見守ることができました。
日本でもまだ少数派の高岡健先生を、やっとクッキングハウスにお招きすることができて、こんなに嬉しいことはありません。メンバー達も、真っ直ぐに受け止めて聴いてくれました。
“やっと信頼できる大人に出会えました”と、岡村陽子さんは、握手をして思いを伝えました。「高岡健先生のお話は、安心感をくれました」と、今井さん。「引きこもりを半年したことを、いけないと思う気持ちが強かったが、あの時、自分と会話して、いろんなことを考えることができて、充電期間で良かったのだ、と先生に『引きこもりは人生の無駄ではない』と認めてもらえて良かったです」と安高さんもにっこり嬉しそうでした。 (松浦幸子)
[講演より抜粋]
・引きこもりは人生に必要。引きこもったほうがいい、と考えている。逆に、一刻も早く引き出せという人がいるが、間違いだと思う。安心して引きこもれる社会を作ったほうがいい。
・登校拒否は病気ではない。健康なこと。学校の方が病気になっている。そこに馴染めない方が正常である。一斉行動、集団を大事にしているが、そこに入れない子がいて当然。いのちの危険があるんだから、拒否する権利を保障するべき。
・そもそも「悪いことで治さないといけない」という発想が悪い。充分、引きこもっていただく方がいい。自分でしっかりエネルギーを蓄えないといけない。蓄えないうちに出されると自殺に追い込まれたりする。引きこもりを否定的に考えるから、悲劇が起きる。
・引きこもっている間は、たくさんのことを考えている。新聞を読んだり、読書をしている率が高い。
夏目漱石の「それから」は、元祖ひきこもりとも言える。誰とも会わない、無音の社会参加。
・動いている時だけがエネルギーという考えは大間違い。GNPでは消費の方が大きい。消費だけしている人間の方がGNPに貢献している。
・不登校が「良くないこと」と思っていると自分との対話が成立していないので、延長戦としてひきこもりもする。自分との対話をすることが必要。
・タイでは、子どもはお坊さんになって数年引きこもらないといけない。日本も、15歳~40歳の間に引きこもらないといけない、という実験をしたらどうだろう。最低7年で免許皆伝。
・エネルギーを蓄えたら自然に動き出せる。一生引きこもるのも最高の生き方。昔、高貴な人は働くなんて、はしたないことは、していなかった。消費だけしていたんですね。
・同じ病気でも、肯定されているかされていないか、が大きい。良くないこととして責められていると、うつ病になる。統合失調症の経過で引きこもる時、幻聴妄想の急性期を過ぎると、エネルギーを消耗するので、ちょっとさびしいけど活動が低下して引きこもってエネルギーを蓄える必要がある。
・引きこもっている人と関わる人について、「斜めの関係」というのがある。1970年代から使われる言葉。無理やり学校に行かせようとした時、親や教師や友達が引っ張り出そうとしてもうまくいかない。人間関係がうまくいくのは、斜めの関係の人。精神年齢が叔父や叔母くらいで、社会的地位のない人がいい。その2つが揃っているのがいい。学校に行かなくても、人生の満足度が高い人生を歩めている無用者がいい。若者にとって縦の関係は嫌というほどある。横の関係も、競争で嫌な思いをしている。斜めの関係は初めての経験になる。斜めの関係があれば、人生が広がる。
・部屋の中だけで引きこもって、ごはんだけ食べる、という人もいる。「ごはん」というコミュニケーションでつながることができている。まわり道に見えるが、まわり道によって豊かになる。関わる人も、豊かになっていく。言葉以外の関わりも大事。人生、不健康なことが混じっている方がいい。
〈満員御礼の熱気〉
総会の開催を3月末までの正会員131人の皆様にお知らせしましたところ、早速に36人の出席のお返事と70人の方から委任状を頂き、無事に総会を迎えることができました。ありがとうございました。
当日は、夏日の快晴。市民の方やメンバーたちもたくさん集まってくれて、会場のクッキングスターは、42人の満員御礼の熱気。冷たい緑茶でお出迎えし、また議案書が見やすいように、今年は机と椅子を総動員して会場を準備しました。松浦さんと池田和子さんの息の合った議長団の進行とともに、2013年度のたくさんの活動報告や、今年度の前向きな計画案が審議されました。議案もスムーズに可決され、会計監査の内田敬子さんからは、「厳正に監査しました。細かな会計処理を、日ごろの活動と共に丁寧によくやっていますね」。長年、企業で働いてこられた正会員の岩城さんからは、「良い数字が出て安心しました」監事の増野肇先生からは「とてもよい総会で、気分も爽快です」と場が和む言葉もいただきました。今年度も気持ちをひとつにして、頑張っていこうと思います。
(クッキングハウス会事務局 田村陽子)
〈交流会は、ほっと落ち着いたひととき〉
講演会後は会場をレストランに移して、おもてなし手料理で交流会です。今回は趣向を変えて体の中から温まる、根菜料理のレパートリー。ごぼうのつくね、長芋・レンコン・人参・ごぼう・カブのピクルスで作ったちらし寿司、野菜たっぷりミネストローネ、関川村・平田ゆかりさんから届いた卵で作った、ほうれん草のオムレツ。一週間前から着々と準備を重ねてきました。
当日の盛りつけは、グッドセンスの研さんと、田口さんにお任せ。素朴な料理が、ぱっと華やかになりました。さらに彩を添えてくれたのが、研さんのサラダです。そして豪華差し入れも。山田忠さんからは自家製・鶏の燻製。斎藤珠恵さんからは秘密栽培のパイナップル。山﨑亨さんからは焼酎と日本酒。小矢野さんからは、おいしい甘酒。
山﨑亨さんの乾杯の発声に続いて、メンバーの一芸大会の始まりです。白いドレスに身を包んだ、きよみさんは斎藤さんを呼び出し、手拭いをプラプラと「大きな古時計」を披露。宮川さんからも、いつもの謎かけが飛び出し、元気になったことを喜びました。山田忠さんはウクレレ片手に一芸も披露してくださり、ミニライブ会場と化したレストランです。パーティー料理の食材も各地のつながりやメンバーのご両親からの応援の品をふんだんに使わせていただきました。つながりの大事さを感じられる交流会となりました。 (有光梨紗)
〈レポート〉 スウさんのピースウォーク 10回目 4月18日 開催
~CD 「ほかの誰とも」 に込めた願い~
・「ほめ言葉のシャワー」をつくった時、娘の万依が、憲法13条があることを教えてくれた。憲法を口語訳して、娘が朗読してくれた。うたってみたいなー、と、ふと思った。3.11の後、うたにしたくなった。人々が、あまりにもないがしろにされているから。13条に書いてあることが守られていないから。
・おさらい…憲法と法律の大きな違いは…法律は民が守るもの。憲法は権力を縛るもの。憲法の主語は、“私たち”。押し付けられたものなんかではない。
・国は憲法を邪魔に感じている。邪魔であることが、国を縛っている証拠。憲法がちゃんとあれば、国は勝手なことできない。
・こんな大変な時、個人的に小さくうたってちゃダメだ。勇気が湧く。エイヤ!とCDをつくろう。うたを聞くだけじゃ分からなくても、歌詞ジャケットで読み物にすれば読んでもらえる。分厚い本じゃなくて、小さくてピンクな短いものなら伝わる。こんなこと言って大丈夫かな?と怖がる気持ちもある。
・秘密保護法が強行採決された。国が隠したいことをバラされたくない。都合の悪いことを隠したい。12月、絶望的な気持ちになったけど、国中で反対運動が起きて、悪いことから、その中から希望を見出すことに気づいた人がたくさんいた。これってSSTだ!つらい中でも、いいことを見つけて言葉で言い合う、SST的なものの見方が身についた。ありがとう。
・私たちは瀬戸際に立たされている。法律の言葉は分かりにくい。自分の語れる言葉を持つことはとても大事。誰かに話すことも大事。こういう思いを込めてCDを作った。危機感をひとりで抱えるのは、しんどい。みんなで語り合えるようにしたくなった。 [講演より抜粋]
憲法9条という世界に誇れる憲法があるのに、日本はもう戦争はしない、戦力を放棄する、と世界中の人々に約束しているのに、特定秘密保護法は強行採決され、集団的自衛権行使もすすみ、あれよあれよという間に戦争ができる国になっていく恐ろしさ。
私は戦後、当時の満州から引き揚げて、家族が散り散りになってしまった母から、寝物語に戦争の悲惨さを伝えられてきた。「戦争は、人の心をズタズタに引き裂いてしまうから、やってはいけないよ」と、話の最後に自らに語りかけるように、母は必ずそうつぶやいていた。
私が心の居場所をやっているのは、一人ひとりが心の平和を取り戻したいからだ。戦争は、心の平和を奪ってしまうから、やってはいけないのだ。
一人になると押し寄せてくる不安に、どうやって闘ったらいいのか途方に暮れてしまう。そんな時、スウさんのピースウォーク10回目を迎えることができた。憲法13条にこめた願いを、よく練り上げた、いい講演だった。わかりやすく、しかも、しなやかな感性で豊かな表現力。可愛らしいセンスもある。
誰にでも受け入れられる話ができるって、すごいこと。「ほかの誰とも」(CD)を、スウさんが歌ってくれると、それが心に、じわっと染み込んでくる。こんな憲法を私達は持っている。ノーベル平和賞に充分、値するのだ。 (松浦幸子)
講演の後半は、「大切」のリレーをワークショップで行いました。人を大切にするってどんなこと?自分が大切にされたのは、どんなこと?全員がそれぞれの思い出をかわいい紙に書いて、リレーで朗読しました。
・話をよく聴いてもらえた ・関心を持ってくれる ・共感してくれる ・一緒に片付けてくれる
・名前を呼んでくれた ・ありがとうと言ってもらえた ・顔を見て「おはよう」「おやすみ」のあいさつ
・自分に「休もう」と言い聞かせて自分を大切にした ・その人の良い所を意識する
スウさんのお葉書
無条件で、個として生きることを、憲法によって保障されている、守られている、ということの発見。確かにクッキングハウスの理念ともぴったり重なってましたね。「大切」なリレー、ほめシャワのリレーと同じく、あんな風にすると「大切」が具体的に感じられますね。参加のみなさんのご協力あればこそ!