クッキングハウスからこんにちは No.154

目次(青字の記事を抜粋してあります)2014年2月5日発行


もくじ
巻頭言:ティールーム移転…1、特集・マッシー新連載スペシャル…2、正会員 賛助会御礼,新年会…5、クッキングハウス10大ニュース, 前田ケイ先生お便り,家族SST報告…6、動くin香川…7、将来会,メンタルヘルス市民講座…8、スウさんのピースウォーク,仲間紹介…9、文化学習企画…10、公開紹介会日程, 動く,各地からありがとう,料理例,でれすけ原発CD発売…11、原画展開催案内,賛助会お願い…12

…特   集…マッシ― 新連載スタート
 心の健康講座とサイコドラマで、当事者や家族に大きな安心感をプレゼントし続けて下さっているマッシ―こと増野肇先生。80歳を超えても、心は増々豊かに広がり、みんなとサイコドラマを楽しみ、心の健康講座では絶妙なアドバイスをして、やさしい笑顔で包み込んでくれています。    
精神科医であることも忘れている、または超越している、こんなにも偉大な先生が、これからの時代、現れるだろうかとも思ってしまいます。そんな先生に、当事者の長谷川誠さんが「精神科医の肩書も、ルーテル学院大学名誉教授であることも外して、普通のおじいさんとして語って欲しい。教科書と違う精神保健福祉の本が欲しい」と、まっすぐな気持ちを伝えて頼みました。 
そこで今号から、マッシ―がひとりのおじいさんとして語る、長谷川誠さんとの対談「夢見る勇気」がスタートします。精神分析のフロイトとサイコドラマのモレノの出会いから物語が始まっています。歴史を辿りながら、私達は未来に生きる可能性を見つけていけることでしょう。どうぞ新連載をお楽しみください。                                    (松浦幸子)


 
夢 見 る 勇 気     増野 肇 〈第1回〉

(じいさんが日の当たる縁側で庭を見ていると、まことが現れる)
じいさん:おや、まことさんだね、また、なにか聞きたいことがあるのかな?
まこと:聞きたいことがあるよ。ねえ、夢見る勇気を作るってどういう意味?
じいさん:「夢見る勇気」?どこで、その言葉を聞いたのかね。
まこと:心理劇学会のニュースを見ていたらそこに書いてあったんだよ。
じいさん:へー、そんなもの読んでいるのかね。感心だね。でも、心理劇ならマッシー教授が専門だね。マッシーに聞いてみたら?
(アイパットのようなものを取り出す)
これはね、「バイパット」と言って、何でも知りたいことが立体的に出て来るんだよ。どれ、「夢見る勇気」を引いてみようか。
(画面にマッシー教授が現れる)
マッシー:それは、この本の中に出てくるのだ。「神を演じ続けた男」つまりモレノの伝記だ。私が翻訳したのだ。この翻訳には苦労した。ウイーンまで行って確かめたんだ。懐かしいな。その本の中で、フロイトとモレノが出合うところがある。
まこと:フロイトとモレノはけんかしたの?
マッシー:心理劇の創始者であるモレノがウイーンの大学にいたとき、もう精神分析で有名になっていたフロイトが講義に来た場面だね。学生のモレノにフロイトが「君は何をやりたいのか?」と聞いたのだ。すると学生のモレノは、有名なフロイト博士に「あなたが夢を分析する時、私は人々に再び夢を見る勇気を与えます。いかにして神を演じるかを教えます」と言ったのだね。夢を分析するというのは科学の心だ。人間を理解する手段さ。それに対して、モレノは行動の人だ。人間の持つ夢見る力を応援しようとした。それがサイコドラマだ。
まこと:ほら、またマッシー教授の講義が始まった。いやだな。名誉教授の講義なんか聴きたくない。消してよ。
じいさん:(「バイパット」を消す)
アイヨ。消したよ。まことさんは講義は嫌いなんだね。それが君の抗議だね。
まこと:講義調になると難しいから嫌いだよ。頭の中が真っ白になる。ぼくは普通のじいさんと話したいな。じいさんは夢を分析するの?それとも応援する方?
(バイパットが自動的スイッチが入り、マッシー教授が現れる)
マッシー:出来ない分析をして巻き込まれていろいろ悩んでいるのが君達当事者だ。それに対して、クッキングハウスを作って、夢を実現させているのが松浦幸子さんさ。「夢tomo」もそこから生まれたのだね。それに対して私は夢を楽しむことを勧めたい。それがサイコドラマなのだ。サイコドラマこそ夢のアラカルトだ。
まこと:ほら、又、講義が始まった。 (バイパットを消す)
じいさん:いいじゃないか。講義があって、いろいろなことが分かるんだから。
まこと:それに抗議してはいけないの?
爺さん:講義に抗議かね。それによって講義も深まるからいいんじゃないの。広義な解釈が出来るような講義になるからね。
まこと:下手な洒落言わないでよ。
じいさん:すまん、すまん。で、何の話だっけ?
まこと:ぼくはじいさんの体験を聞きたいんだよ。じいさんは夢を見たの?どんな夢を見たの?昔、鍵をかけない病院を作ろうとしたんでしょう。
じいさん:そうだね。ずっと昔のことだ。学生の時に精神科の病院に実習に行ったら、看護婦さんが鍵をガチャガチャさせているのを見て怖くなったんだよ。
まこと:刑務所みたいなんだね。
じいさん:私は夢を楽しむ方だからね。鍵の音を聞いたんじゃ夢は出てこない。この世から治らない病気をなくし、鍵のある病院をなくそうと思ったんだよ。それが私の夢だった。
マッシー:夢を分析して、人間を研究する人もいる。人間を知ることで満足する人もいる。しかし、モレノは実際に夢を実現させることが好きだったのだ。それが、フロイトとモレノの違いだ。同時に、現実主義者の森田とフロイトの違いでもある。
まこと:今度は森田先生が出てきちゃったよ。僕は喧嘩は嫌だな。
マッシー:喧嘩ではない。直面化といってぶつかることで何かが生まれる。正面からぶつかることはいいことだ。
まこと:ぶつかったり喧嘩をするのは嫌いだよ。二人を仲直りさせてよ。
じいさん:あなたは優しいね。ぶつかるのは喧嘩ではないけど、楽しく平和に生きられる方がいい。私もそう思うよ。出来たら喧嘩せず、ぶつからず、楽しく生きたい。それも私の夢だった。
(「バイパット」に別の人物が現れる)
森田正馬:恐怖突入です。怖いことを避けていては駄目です。不安をなくそうとするから不安が大きくなるのです。不安のままに、怖いままに、必要なことをやっていくのが森田療法です。
まこと:ほら。今度は森田先生が出てきてしまった。恐怖突入なんて嫌だよ。出来ないよ。
じいさん:それはあんたが一人だからだよ。友達が必要だ。仲間がいれば恐怖にも突入できるよ。
マッシー:赤信号、みんなで渡れば怖くない。
まこと:教授が又変なことを言っている、赤信号渡ってはだめだよ。
じいさん:友達、仲間が必要だといいたいのだろう。歌がいいよ。
〈「バイパット」から音楽。♪友達はいいものだ。目と目でものが言える。困った時は助けを出そう。♪〉
じいさん:〈歌う〉♪みんなは一人のために。♪
マッシー:いい歌だね。モレノも森田も人間の持っている良い方向に目を向けさせようとしたのだね。悪いところ解決しようとしても、かえってそこに巻き込まれている人が多いからね。
まこと:でもそれも大事だよね。
マッシー:そう自分で考えて、自分で解決するのが人間に与えられた運命で。昔々、人間は神の声を聞いてそれに従って幸せな生活をしていた。ところが、神の声が聞こえなくなった時があり、そこで、右脳を使って自分で考えるようになった。
まこと:アダムがリンゴを食べて、神の国から追放された話だね。
マッシー:人間は、自分の脳を使っていろいろな文明を作ってきた。しかし、同時に悩むようになった。文明破壊的な世界を作ってきた反面、人間の悩みも作り出した。心の病気もその一つだね。
まこと:右能と左脳のこと?
マッシー:そうだ。右脳の世界がフロイトの夢を分析する世界だ。それに対して、自発性を引き出して自由に夢を見るようにするのがサイコドラマだ。
まこと:モレノと森田と両方ともMがつくけど、まっしーとまこともMだね。ここの松浦さんもMだよ。
マッシー:そうだね。いいところに気がついたね。星のようにこの5人が輝けるといいね。
まこと:Mと言う字も5つのポイントで出来ているね。
マッシー:クッキングハウスは、夢を見るだけでなくそれを実現させたところだね。それを手伝うのがソーシャルワーカーだ。しかしそれの原動力となるのは、現実の世界でぶつかり悩んでいる人たちが声を上げるからだ。まことさんの役割はそこにあるのだね。
じいさん:教授は勝手なことを言うのだから無視してもいいよ。でもまことさんの夢は何かな。
まこと:じいさんの夢を教えて。
じいさん:そうだね、君ぐらいの時には夢があった。精神病院の鍵をなくして、ゆっくり休める場所を作りたかった。庭には孔雀が散歩していて、ホロホロチョウを追いまわせるような病院を作りたかった。
まこと:それが初声荘だったの?
じいさん:楽しい時間が過ごせるように、城ヶ島に行ったり、鎌倉を散歩したり、これは実現できたね。どっちもいいところだよ。
まこと:どうやって鍵をなくしたの?
じーさん:治療共同体の病院を作ろうとしていた精神科医がいたので、一緒に協力したのだよ。
まこと:治療共同体?マックスウエル・ジョーンズの?
マッシー:そうだ。治療共同体を言い出して実行したのがイギリスの精神科医マックス
ウェル・ジョーンズだ。よく知っているな。感心だね。
まこと:関心があるからだよ。いい病院は必要だよね。じいさんもそう思ったの?
じいさん:そう思ったんだよね。初めて精神病院を見学した時に、看護婦さんが鍵をかけるのを見て驚いたんだね。本当に休める場所を作りたかった。でも、お金持ちでもないし、自分ではできなかった。だから、そのお金と理想を持っていた先生に協力したのだよ。
まこと:じゃあ、じいさんも夢を分析するよりも、夢を実現させる方だったんだ。
じいさん:いやいや、私一人では何も出来なかった。出会いだね。その先生との出会い、そして今は、まことさんとの出会いかな?          〈次号へ続く〉


〈レポート〉  涙と拍手で包まれた感動の家族SST



 
 2014年1月の家族SSTのテーマは「夫婦が協力しあうには」でした。
 当事者は家族の感情や考え方・行動の取り方にとても敏感です。病気のつらさから、まだ外に向かっていくエネルギーが充電されていないので、その分、家族が自分を受け入れてくれているかどうかに関心が行き、エネルギーが内向きになってしまうのです。また、病気から退行現象も起きるので、家族に甘えたい・何でも認めてわかってほしい・うまくできないのは家族のせいにしたい、という子どもの心理も抱えています。こういう状況の時こそ夫婦で力を合わせ、当事者に「大丈夫だよ、お父さんもお母さんも長い目で見守っているからね。あせらないで、ゆっくり元気になっていけばいいんだよ。」と、心から何度も伝えていくことが大事です。
 家族が心の応援団で、自分を見守ってくれているということが大きな深い安心感として納得できたら、当事者は心のゆとりを持って、外に向かっていくエネルギーを充電していったり、チャレンジしていくことができるのです。
 
夫婦が協力し合うポイント  (④~⑥は私メッセージで伝えましょう)
① 夫婦で責任のなすりあいをしない
(誰のせいで病気になったわけでもないのです。病気は病気として回復することを考えればいい)
② 自分の方が偉いと思わない
(相手を見下すような態度をしていると子どもとしては、とてもつらいのです)
③ 当事者の前で夫婦が否定し合うことを言わない
④ 夫婦のお互いのいいところをみつけてほめる
⑤ 夫婦でお互いに挨拶をする  (すべてはハローからコミュニケーションが始まる)
⑥ やってもらったことにはお礼を言う

どの家族にも共通性があるテーマのためか、久しぶりの参加者もあり、にぎやか。メンバーの斉藤さんに父親役になってもらい、早速に夫のいいところを見つけて、ほめる練習をする。
「血糖値を下げるために食事のコントロールをしていて嬉しい。家族のことを思ってくれているのね」、「洗濯物を取り込んで畳んでくれてありがとう」、「いつも子どものことで精一杯やってくれてありがとう」…心からのお礼や感謝の気持ちが伝えられて、夫役の斉藤さんも嬉しそうに答えてくれる。ご夫妻で参加されて、2人共いつもは言えなかったほめ言葉を伝え合って、涙。そしてハグをし合う姿に、みんなが感動の涙と拍手。私もハグし合いたい!とやさしい気持ちになれた家族SSTだった。                                     (松浦幸子)




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