総 会 特 集
~充実した文化・学習事業の一年~
5月26日(土)は汗ばむ位の陽気になり、まさに総会日和。満席を予想して、前日から会場づくり。メンバー達には絨毯(じゅうたん)を敷いて詰めて座ってもらいます。ソシオドラマの時間になると座る向きを変えて舞台となる仕組みです。調理台も可動式なので、めいっぱい寄せて少しでも空間を広げました。いつもの玄関はお客様用、勝手口はメンバーとスタッフ用にと分けることで混雑も緩和。狭い場所をあれこれ工夫して使うことを、もう25年もやってきたのだなあ、と感慨(かんがい)深いです。当事者代表の理事・池田和子さんと松浦が議長に承認され、議事が進行。2011年度の盛り沢山の事業を報告しました。
⑴ メンタルヘルスの学びが充実
増野肇先生の心の健康講座が、当事者の希望に沿ってスタートし、家族も当事者も共に学び、丁寧なシェアリングを重ね、互いが理解し合える質の高いセルフヘルプグループへと成長してきた。また、調布市市民活動えんがわファンドの助成金事業としても認められた。
・メンタルヘルス市民講座は希望の講座として定着。メンバー達が回復してきた体験を自分なりの表現で語ることが、参加者に希望をプレゼントすることになった。
・メンタルヘルス市民大学は当事者研究へとステップアップしてきた。
・SST講座の充実
いつものSST、スペシャルSST(昼の部・夜の部)、家族SST、夢tomo SSTと、プログラムが充実し、対人関係の問題を孤立して悩まず、すぐに仲間の応援をもらって練習できる心強い味方となった。
⑵ 心の居場所から平和を実現していくために被災地に心を寄せる支援
「ミツバチの羽音と地球の回転」上映会と鎌仲ひとみ監督の講演会。たとえミツバチの羽音は小さくても、共振し合えば地球環境を変えていけるのではないか。収益はすべて岩手県・大槌町の菜の花プロジェクト、立ちあがれ!ど真ん中おおつち、山口県・祝島へ送ることができた。
⑶ 毎月一回、将来を考える会で自立支援事業への移行の準備を丁寧に行ってきた
メンバーも積極的に参加し、質問も活発。シェアリングでも一人ひとりが気持ちを語ることができた。契約日には59名ものメンバーが集まってくれてスムーズに契約が出来たこと・メンバーの協力に感謝したい。みんなのおかげで共同作業所という名称の最後の年を無事に乗り切ることが出来た。小さな居場所なのに、なんとたくさんの活動を生き生きとやってきたことだろう。
2012年度の事業計画の最も大きな事業は、
① 25周年を祝う会を800席満席にして、集まってくれたみんなが元気になることです。
3年かけてつくってきた私達のうた16曲のCDを完成させ「私の心の居場所(仮)」CD文庫 2,500円 として発売し、舞台で発表するのです。心の居場所で一緒に助け合って生きてきた私達だからこそつくれた、やさしくわかりやすいうたばかりです。第二部では「リカバリー」をテーマに夢tomo
の仲間達と松浦がシンポジウムを行います。生きづらさを抱えてここまで生きてきた自分にとってのリカバリーについて、メンバー達が素直に語ってくれることでしょう。
田邊順一さんの「笑顔」の写真集の出版も25周年に合わせての大きな楽しみです。きっと私達の何よりも大切な宝物となることでしょう。
② 自立支援事業所としてスタートした3つの場を育てていきたいです。
常勤スタッフも2人減りましたが、3つの場は維持できています。困難なことがあったらクッキングハウスの理念に立ち戻り、私達の心の居場所から、あたたかい安心感をプレゼントしていきたいと思うのです。
クッキングハウスの理念
1 安心して、自分らしさを取り戻せる居場所
2 メンバー一人一人が、必ず誰かの役に立っていることを、確信できる活動
3 弱い人の立場に添った新しい福祉文化を創造する場
4 いつも開かれた市民交流の場
総会では、当事者会“夢tomo”の事業報告と決算報告、2012年の事業計画と予算案も承認されました。リカバリーミーティング・夕食会・夢tomo喫茶の、ほほえましい日常活動。たまりばフェスティバルや20周年のお祝い会への参加等、親善大使の役割も果たしている夢tomo が、当事者の灯台として周りを照らしてくれたら、生きづらさの不安からも迷いからも救われることでしょう。 (松浦幸子)
スウさんのピースウォーク
心の居場所の原点!
8回目となった水野スウさんのピースウォーク。毎年4月になると、スウさんが北陸・金沢の春を運んできてくれるのを楽しみに、皆で待っています。テーマは私のお願いで「心の居場所の原点」。スウさんにお話しして頂く時、なぜか毎回「この話をしてほしい」と、注文の多い、不思議なレストランなのです。でも、学びたい気持ちを深く理解して、きちんと注文に応えてくれるスウさんなのです。
1983年、子育てをしている日々の中で「孤立して子育てをしてはいけない。一緒に語り合いたい」と金沢の町のマンションの一室で「紅茶の時間」を開いたスウさんと、1987年、心の病気をした人達と、病院ではなく、地域で一緒に生きていきたいと、ワンルームマンションで“おいしいね、から、元気になる場”クッキングハウスを開いた松浦とが、四半世紀経ち、こうして互いに繋がり、学び合うことができるようになったのです。
都会でも地方でも、心の問題は深刻な状況です。心の居場所があちこちにできて欲しい、私の心の居場所はどこにあるのだろうと、捜し求める時代になってしまいました。心の居場所は、簡単にできるものでもありません。どんな状況でやってきても、“そのままのあなたで大好き”と、心から受け止められる人達がいること。いろんなつらい状況の人達がやってくる中で、安心感をプレゼントしようと一生懸命に心を尽くしたドラマが積み重なり、その場の空気が温かくなっていることが、心の居場所なのでしょう。そのことをスウさんは「紅茶銀行不定期安心貯金」と呼んでいます。「心の居場所にやってきた人達が“このままでいいんだ”と“安心”を残して帰っていくので、安心の空気がなくならず、いつも循環しているからです。」とお話しされます。だから、スウさんにとっても、紅茶の時間は心の居場所なんだなと気づきました。「私がやらなくては!と、頑張った時期もあったし、ひどく落ち込んだ時もありました。そんな状況でも、仲間がいつものように紅茶にやってきて、私の話を聴いてくれました。」
一緒に来てくれた万依さんは“ほめ言葉のシャワー”を編集することを通して「平和」へと考えを深めていったことを話してくれました。自分のことが嫌いだった、でも、“ほめ言葉のシャワー”の一人ひとりの言葉を見ているうちに自分のことを好きになりたいと思うようになり、自分に言ってあげたいほめ言葉を、あとがきに書くことが出来ました。そして“ほめ言葉のシャワー”の考え方が憲法13条に一致することに気付いたのです。
【個人の尊重】
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
「自分を大切にしたいことは、わがままではない。どの人も大事で、みんなと行ったり来たりの関係で一方通行ではないのです。何もできなくてもいい、個として生きていることそのものを尊重されていいのです」。万依さんの“ほめ言葉のシャワーから平和へ”が見事に繋がった話でした。
心の居場所の原点は、一人ひとりが、そのままの“Be”であることが、誰からも認められることだったのです。心の居場所が増々深く魅力的なものになってきそうです。
(松浦幸子)