クッキングハウスからこんにちは No.141

目次(青字の記事を抜粋してあります)2011年11月22日発行

目次
巻頭言:共に生きるという課題に向き合う・目次…1、特集:リハ学会報告 ムジカ宮沢賢治の旅・心つないで…2~5、動くクッキングハウス・・・5、レポート:市民大学・旅の報告・クッキング畑・レストランリニューアル、市民講座…5~8、文化学習企画:諸隈まりさんピアノ・お知らせコーナー・ラオスという国・父親学習会・心の健康講座・紹介会・キミ子方式・SST・楽健法・サイコドラマ等・・・8~11、講演スケジュール・各地からありがとう等・・11~12

精神障害者リハビリテーション学会in京都レポート

家族もリカバリー

ご家族3人の体験発表を聞きました。最も困難な時期を当事者と共に歩み、苦しみ悩みながらもよりよく生きようとしている姿に、たくましさや人間の大きさを感じました。人生のより深いステージに進んでいる3人の方のお話を聞いて、自分の人生もこうありたいと強く思いました。リカバリーは、当事者だけでなく家族にも、そして支援者にも、さらには精神保健福祉以外の分野にもあてはまる考え方だと、冒頭で伊藤順一郎先生がおっしゃったことが心に残りました。
クッキングハウスでも家族SSTを行っています。仲間とご飯を食べお茶を飲みながら共に学び、心おきなく交流して元気になっていく姿は、3人の発表者の姿と重なり、安心して語り合える場はどんな人にも必要で大切なのだと実感しました。(竹内高子)

復興・再生でなく新生を~福島県相双地域の取り組み~
今回のリハビリテーション学会では、東日本大震災後のメンタルヘルスの取り組みも、大きな柱の一つになりました。特に原発の影響で大変な福島県の相双地域からみなさんが来て下さり、シンポジウムが行われました。
勤めていた原発から20分の小高赤坂病院は閉鎖になり、今は公立相馬病院に臨時精神科をつくり、対応している精神保健福祉士の須藤さんは、「なぜこんな大変な中、やってこられたのか。と様々な場所で聞かれる。今、町から本当に人がいなくなっている。もうこれ以上何も失いたくない。誰もいなくなって欲しくない。自分は地元をこんなに愛していたのかと思うほど。だからやっている。」と話してくれました。
震災から一週間で、840人の患者さんを転院。その後、臨時にできた精神科に医師を派遣してもらい、常駐の医師を持たないまま診察を行っている。患者さん達はいつも違う医師に診てもらう状態なので、改善を望んでいるという。
浪江町にあった、地域活動支援センター・コーヒータイムからは、所長の橋本百合子さんとメンバーの志賀さんが参加。浪江町は20キロ圏内で入れないが、何とかみんなの居場所を取り戻したいと、二本松市に新しく場を準備。何の助成もない運営の中で、前向きにやっているのです。志賀さんは、「私はずっとコーヒータイムに通って、コーヒータイムの主になりたいです。みなさん、コーヒータイムに遊びに来てください。」大きな明るい声で語っていた姿に感動しました。
これからは、医療だけでなく福祉も連携していくこと、アウトリーチ(出向いて行って医療や福祉の支援をする)を取り入れた包括的な支援を、確認しあっているとの話でした。松浦さんも「ミツバチの羽音と地球の回転」の上映会を行い、私たちも福島とつながって生きていきたいと思っていることを会場から発言しました。「この地域で生きていく」、そう決心した多くの支援者や当事者、家族の方に感動したシンポジウムでした。(林由佳里)

「楽しくなければ精神科医療ではない!」
ランチョンセミナーで、宮崎若久病院・米良誠剛医師の取り組みを聴きました。
米良先生が医師になった20年前、表向きは「社会復帰」「退院促進」といっても、多剤大量の処方、治療方針は医師主導、患者と良い関係を保つどころか、正直、仕事が楽しくなかったそうです。そこで新しい治療概念(徹底した患者中心の考え方)を入れ、多剤から単剤へ慎重に移行。患者も治療者も前向きにリカバリーにできるようになりました。
治療を映画の寅さんに例え「医師(マドンナ)だけでは無理。寅さんを中心に、妹のさくら、おいちゃん、おばちゃん、帝釈天の御前さま、タコ社長とたくさんの人たちが寅さんを理解し、寄って支えあっている。患者さんも同じ。家族、薬剤師、ソーシャルワーカー、地域の仲間など、多くの人から支えられたほうがいい。支援者も職種の境目をなくし、互いの仕事内容を想像し理解し、他領域にも首を突っ込み、チームで共有していくと、やる気が上がってくる。患者さんも、自分の病気を理解し治療の中心になっていく。これを『主治医権 奉還!』というのです」。
診療場面では、「幸せ評価尺度」を使い、外出することが楽しいですか?音楽を聴いて心地良いですか?と、良いところ、できているところに着目し、ほめる。患者さんの困っていることに答えを出すのではなく、本人の対処の仕方を良く評価する。これは、クッキングハウスの日常と同じ。普段の仕事が肯定され、裏付けられ嬉しくなりました。先生自身、とにかく楽しそうに職種間の連携を図り、地域へも積極的に出向いてネットワークを築いています。ユーモアの影に地道な努力と学び、誠実な仕事が伺えました。(田村陽子)


メンタルヘルス市民大学 当事者研究その3
~うたづくりで可能性発見!~

当事者研究は、自由な角度からできるのです。うたづくりから自分を表現することの楽しさを発見した前沢真貴子さんの研究発表から、私たちも自分の可能性探しの旅ができそうでワクワクしてきました。
前沢さんの研究発表
『2010年から、クッキングハウスの25周年に向けて、みんなで歌えるうたをつくろうと、歌詞作りが始まりました。16曲にしぼり、歌詞を渡された時、“前沢真貴子様”と表紙に書いてありました。「曲を作ってみたい」と体がむずむずする感じになり、そのやりたい波を大事にしたかったのです。「ヤマボウシの花」を3拍子はどうだろうと、体でリズムをとり歌ってみたらうまくいきました。歌ったら、みんなにほめてもらえたことも、大きな張り紙に曲を付けた人の名前が張り出されたことも、いい刺激になりました。
 次々と曲が浮かんで、16曲中14曲、作曲しました。ボイスレコーダーも何もないので、自分の頭にインプットするしかないと、ヘアブラシをマイクにして毎晩歌いました。
 曲作りは、プロのアーティストやバンドをやる人がするもので、自分の役割ではないと思ってきたから、「自分でも曲が作れる!」と発見し、毎日が楽しくなってきました。
 私のように中年になってから、自分の可能性を開けるんだとわかり、これからの人生、何か起こるかもしれないと希望が湧いてきたことが何よりの宝物となりました。
 うたの持つパワーを笠木透さんに教えてもらいました。みんなで歌ったり、みんながほめてくれたりするうたづくり教室は、終わったあと不思議と疲れないのです。全くの初心者なのに、仲間がほめて背中を押してくれたことを思うと、自分だけではできなかったのだと、わかります。やっぱり私って、うたが好きなんです。』
 と話す前沢さんの声は、弾んで輝いた笑顔でした。自ら作詞・作曲し、自分にうたってあげているという「おつかれさんのうた」を披露してくれました。『うたづくりがこんなに楽しいなんて!今までの人生の中で、一番幸せな気持ちです』と電話で話してくれた声があまりにも嬉しそうで、15年の付き合いの中で最高の生き生きした声だったと、私も感動したのでした。

前沢さんの研究発表に深い共感の思いが語られました。
■ 前沢さんのうた、調布FMでぜひ流れてほしい(岡村)
■ 仕事でボロボロになって帰ってきた時、「おつかれさんのうた」で涙ぽろぽろになりました(小矢野)
■ 歌詞が心に届くメロディーだった。中年になって新しい可能性に出会った喜び、自分も味わいたい(瀬野)
■ うたづくりで、思いを言葉にする作業で、私も感情が芽生えてきました。病気で感情が出てこなくて、それまでつらかった(杉村)
受け止めてくれる仲間がいて、また次に進もうと勇気がでるのです。(松浦幸子)

前島さんに感謝を込めて!レストラン・収穫体験ツアー茨城

11月10日、「クッキング畑」こと茨城県常総市の前島さんの畑へ、レストランで働く仲間で収穫体験に行ってきました。
前島さんは、沢山の種類の野菜を毎回箱いっぱいに詰め込んでレストランに届けてくださいます。毎朝箱を開けるのが楽しみで、どんな料理を作ろうか、みんなで知恵を出し合い、ランチメニューを決めています。
畑では、立派に育ったネギ・菊・人参・ミニトマト・ヤーコン・ニラ・八頭・里芋・春菊などさまざまな野菜の収穫を体験しました。目に映る緑と菊の花の色の綺麗だったこと。土に触れ、心もほぐれるようでした。収穫の後は、朝早くから前島さんとご近所の方々が寄り合い準備して下さったお料理を頂き交流しました。つきたてのおもち・天ぷら・おでん・おむすび・おいなりさん・ポテトサラダ・お漬物・熱々の豚汁・スイートポテト…畑で採れた野菜を使ったごちそうが沢山並んで、お腹いっぱいのおもてなしに感動しました。「田舎に帰ってきた気持ちで過ごしてほしいのよ」という前島さんたちの温かい心遣いが嬉しかったです。
クッキング畑を訪ねたことで、私たちが頂いている野菜が、どんなふうに畑で育っているのか見ることができ、この畑の恵みからも元気をもらっていることを実感しました。
(有光梨紗)

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