2011年8月12日~18日、ラオスを府中たまりばユネスコクラブの仲間と旅した。私達ができる女性の自立支援を探すための旅である。ラオスはタイ、カンボジア、ベトナム、中国、ミャンマーの5カ国に囲まれた日本の本州ほどの広さの国。国土の70%が高原や山岳地帯で、メコン川が人々の暮らしと共に1900kmにわたって流れている。
エネルギーは水力発電で、ベトナムや中国に輸出するほど豊富で、外貨収入で最も大きい割合を占めているという。もちろん原発などない!
〈朝の托鉢(たくはつ)風景〉
仏教が文化として人々の生活の中に深く浸透しており、どこに行っても穏やかな微笑みの表情で迎えていただき、とてもほっとする。分かち合って暮らしていることが伝わってきたのは早朝の“托鉢(・・)(たくはつ)”風景だ。貧しい家の子ども達は10才から出家する。オレンジ色の袈裟(けさ)を着て、長い行列をつくり、街を托鉢して回る。街の人々が道端に座り、蒸したもち米を一口ずつ供える。坊さん達は一日に1~2食いただいた食料だけで生活しているという。とても体の小さい坊さんが多い。でも、穏やかな静かな表情で歩いている。たくさんいただいたご飯は別のかごに入れ、学校の貧しい子ども達の給食になるのだという。一年中、毎日どんな天気の日もこの托鉢は続けられる。人々は分かち合って、助け合って暮らしている。そのことが特別なことではなく、全く自然な営みとして、生活の一部となっている。ラオスは経済では世界の貧しい国にランクされているが、決して貧しくはない。心豊かな国だった。
〈ホワイホン職業訓練センターで 伝統の染と機織りを〉
田舎のまだ恵まれていない女性や、障害のある人が、自立して職業を身につけ、自分の力で生計を立てていけるように、伝統的な自然染色と機織り、ミシンの縫製技術を身につけるための職業訓練センターを見学、体験実習した。
首都ビエンチャンの郊外、ホワイホンの豊かな緑の中にホワイホン職業訓練センターがある。
1999年から432名も研修生を育成したという。まだあどけない少女のような母親が、子どもをそばに遊ばせながら、機を織ったり、ミシンをかけていた。子ども達は母親のそばでとても安心なのか、泣き声が聞こえない。母親のイライラした怒り声も聞こえない。なんだか楽園のようだ。
私達もマフラーを植物で染めたり、機織りを教えてもらった。言葉は通じなくても、手仕事だからやってみせてくれることを真似ていけばいい。2時間程でやっと20cmほどの織りができた。手仕事には手間がかかることがよくわかった。
昼食もごちそうになる。メコン川から採れた鯉のような色の魚の塩焼き、竹の子スープ(辛いが実においしい)、腸詰めキャベツ、空(くう)芯(しん)菜(さい)・キャベツのゆでたもの。もち米が常食、指で丸めながら食べる。甘みがあっておいしい。ラオスの人々が常に食べている昼食を食べながら、どこかクッキングハウスの紹介会に似ているなと思った。
説明してもらったり、体験したり、一日を過ごして21ドル。そうだ、クッキングハウスの紹介会に1つワークショップを加えたら、ホワイホンの職業訓練センターと同じになると発見。
どこの国に行っても、それぞれのペースで自立をめざして活動している人々がいる居場所があるとわかり、ラオスの女性達にぐんと親しみを感じ、友達になりたいと思った。ホワイホンのセンターの女性達が染めて織ったマフラーは自然で、素朴で、とてもいい。クッキングハウスでも展示即売会をしたら連帯の気持を表現できるかもしれない。
(松浦幸子)
12/17(土)ラオス報告会 ゲスト・吉岡淳(カフェスロー代表)
時間:1:30~3:30 場所:クッキングスター ティータイム付500円
<動くクッキングハウス>
ホームヘルパー養成研修講座in調布
~ホームヘルプサービスは地域で暮らすための心強い味方~
ここ数年、調布市ゆうあい福祉公社のホームヘルパー養成研修講座に、ホームヘルプサービスを利用しているメンバーと共に招かれている。チームは池田和子さんと前沢真貴子さんと私。毎年好評で、集中して聴いて下さり、クッキングハウスの活動にも関心を持っていただけて嬉しい。
今回は特に2人ともうまく気持を伝えることができたし、参加者にきちんと受け止めてもらえた感触が伝わってきた。心の病気からくる生活のしづらさを理解してもらい、ホームヘルプサービスが地域で自立して暮らすための心強い味方であることを話す。回復につながっていくサポートのポイントとして、
①可能性を広げ、自信をつけるために、今できていることを具体的にほめること
②小さなステップに区切って教えると範囲が見えるので、あせらないでやれること
③指示したり、説教したりするのではなく、サイド・バイ・サイド(横に座る関係)の姿勢で付き合うと、心に負担がかからない
④「私メッセージ」でコミュニケーションすると信頼関係ができる。人間関係が楽になることが回復につながる
⑤少しだけでいいので、今の気分を聞いてほしい。それだけで楽になる
これらのことをSSTのロールプレイで伝えていったので、受講者も参加できるいきいきした講座になった。池田さんも前沢さんも、うまく役割をとってくれる。
<池田和子さん>
ひとりで暮らしていて、今必要なのは、ちょっと話を聞いてもらうことです。初めの10分か15分、私の気持を楽にするように話を聞いてくれます。もう、私の顔を見ただけで、調子が悪いことをわかってくれます。そして、「何を食べたいですか?」と聞いてくれ、チャーハンや煮物やスープなどを何食分か作ってくれます。ヘルパーさんが来てくれているので、この10年、私は地域で再発せずに暮らしてきました。ヘルパーさんに「何を恩返ししたらいいでしょう?」と言ったら、「「和子さんが元気になってくれることが一番嬉しい恩返しですよ」と言われました。
<前沢真貴子さん>
回復していくために、家族と程よい距離をとろうと決意して、ひとりで暮らして10年たちます。ヘルパーさんが来てくれる週一回2時間はとても大切な時間です。掃除全般をしてもらえるだけで、ひとりで暮らす負担がずいぶん軽くなります。自分の希望する人生が送れます。感謝の気持で、玄関まで見送りしています。3月11日の地震の時、ゆうあいのヘルパーステーションから「大丈夫ですか?」と電話をいただき、嬉しかったです。そんな声かけをしてもらえるだけで、孤立しないですみます。
二人とも、病気をしてつらかった年月があって、今がある。それらを乗り越えてきた体験を語りながら、地域で自立して暮らすために、ヘルパーのサポートがちょっと必要なわけを語ってくれた。三人でうたう「不思議なレストラン」を涙ぐんで聞いてくれたヘルパーさん志願の方々が、すぐにランチを食べに来てくれて嬉しかった。(松浦幸子)