クッキングハウスからこんにちは No.115

目次(青字の記事を抜粋してあります)2007年8月20日発行

目次
巻頭言 「当事者から夢と希望を届けます」・目次…1、20周年企画パートU・中越沖地震お見舞い・・・2〜3、
動くクッキングハウス・・・3〜5、レポート サイコドラマの醍醐味・ただ今準備中・SSTワークショップIN「ままや」・・・5〜7、
トピックス いい本が出ました・暑い夏でも元気・・・7〜9
 イベント・文化学習企画・松浦幸子講演スケジュール・各地からありがとう・・・9〜12


20周年企画パートU
“私たちのうた”をどうぞお楽しみに
〜ミュージカルクッキングハウス物語〜

笠木透さん、増田康記さん、岡田京子さんに教わりながら、私たちが作ってきたうたを、20年間の「クッキングハウス物語」として舞台でやってみようということになり、練習に段々熱が入ってきました。主役の松浦幸子役は、池田和子さん。せりふも覚え、明るく大きな声でみんなをリードしてくれています。伴奏も自分たちでやってみようと、岡田京子さんの特訓で、ピアノの小林葉瑠さん、ギターの有光梨紗さんの呼吸も合ってきました。
岡田京子さんのコメントが一つひとつ私たちにやる気を起こしてくれます。

● 舞台から、向こうの観客席に仲間がいっぱいつもりで、マイクの前ではゆっくりと、はっきりと大きな声で話すのよ。突き抜けるようにね。
● 観客のみなさんに自分たちの心を送れば、観客もその心を頂き、心を送ってくれるから、舞台も観客も同じ心になっていけるのよ。
● 一人がせりふを言っている時は、みんなも同じ気持ちになって、うなずいたりにっこりしたり、心が離れないようにね。
● 顔を上げて、笑顔でね。とても素晴らしいから、心にしみこんでくるエネルギーがあるから大丈夫、あとは細部を丁寧にやっていきましょう。
● 「八丈富士」のうたは、海を見ているのだから海を意識して歌うのよ。

 笠木透さんが「結果よりも一緒にやったプロセスが楽しいのだから、何よりのいい思い出になるのだから、プロセスを大事にしてほしい」とおっしゃっていたが、本当にそうだなと思う。練習するたびに、段々とふくらんでくるパワーを感じるのだ。練習の時は、必ず観客になってくれるお客さまをお願いする。そして、感想を頂く。8月14日(火)の練習日には、カナダからお里帰りしている吉原郁子さんも見てくださった。吉原さんは、「バンクーバー9条の会」をやっておられる。日本での市民活動の様子が伝わってこないので心細いことがあるが、クッキングハウスの活動から平和への思いがわかってよかったと話してくださった。


<動くクッキングハウス キミ子方式全国合宿研究大会in春日部 >

松本キミ子さんが美術教授をしている共栄学園短期大学が会場。こじんまりした畑の中の大学。とにかく暑い。斉藤敏朗さんと参加。早速、教室の廊下にクッキングハウスの店を広げる。描きながら、2人で3日間の店の売り子もやる。フロランタンを待っていたのよ、と買い占める方もいて、新商品のフロランタンショコラも初日で完売。賛助会員の漆原さんは、大会の実行委員長でもある。石けんが気に入って宣伝してくれて、これも完売。富樫さんの作った布わらじは、2足注文を頂く。ビーズアクセサリーも、国井さんの作った大胆なものがよく売れた。毎年、楽しみにしてくれる店になった。当事者の親子が「テレビで見ました」と本を買ってくれた。ここから心の相談につながった人もいる。

 スペシャルゲストは「縄文生活図鑑」など原始技術史という学問をやり、火のおこし方、縄文生活、手の技や知恵を追求しながら、人間の文化をとらえ直す作業をすすめている方。絵の具が、どのようにしてできたのかという話がとてもおもしろい。昔から、人びとは石や土や草花から色を作り出し、絵を描いて生活を楽しんできたのだなと、はるか縄文時代に想いを馳せた時間だった。

 最初の色作りは、トンガスタイルで。トンガは、三原色の国旗の国。トンガスタイルとは、トンガ王国に絵を教えに行った時、用意した絵の道具に較べ、描いてみたい人がわっとあふれるように多かった時、苦肉の策でやってみた方法。パレットも筆も水入れも、一つだけ用意しテーブルの4〜5人で回して順番に色を作っていく。一つの色ができるたびに、「きれい」「いい色だね」「そんな色もあったのね」と感動の言葉が出てくる。赤・青・黄の3原色で、いろんな色が作り出せることの最初の感動をまた味わえた。一人で絵を描くのは孤独で、緊張する作業だが、一緒にやればコミュニケーションができ、人と人が仲良くなれる。今年のテーマは、「みんなが絵を描けるって楽しい」。競争ではなく、共に楽しむ体験をしてみようというもの。これは、クッキングハウスの毎日の実践とも共通している。クッキングハウスの20周年の舞台看板にみんながさまざまな色を作り出して飾ろうと思った。
 今年は、韓国から大学の美術の先生や小学校や塾の先生など、8名が参加。韓国に一年留学して言葉を覚えたという、愛知教育大の伊藤さんが通訳。自らもキミ子方式の絵を学んでいることもあり、伸び伸びと通訳をされていて、私たちも3日間ですっかりハングル語になじむことができた。リズムが日本語と似ていて、日本のどこかの方言を聞いているようで心地いい響きだった。ウェルカムパーティーで私は、岡田京子さんに教わった“ムグンファ(むくげの花)”を笠木透さんの日本語訳もつけて歌った。歌が国際交流の絆になればいいなと思って、ふっと韓国のみなさんを見たら、和んだ表情で一緒になってうたってくれていた。

 2日目、私たちは葉書を描いた。赤まんまや、ねこじゃらし、青い栗のイガ、子どものどんぐりなど夏の雑草を探しに散歩に行き、それから描いていく。私は、紫つゆ草の青い花に魅力を感じチャレンジ。じっと見ていると、雑草の見事な生命秩序に驚く。簡単に描けそうでいて、そうそう描けない。隣で丁寧にあかまんまの花を描いている斉藤君は、講師の川合京子さんに、「いいねえ。葉書絵じゃなくて作品にしましょう」とほめてもらっていた。

 午後は、向かい合って互いにモデルになりあって髪の毛を描く。“部分から全体に”なので、髪の毛のかたまりごとにボールペンで描き、隣へ隣へとすすんでいく。描き終わる頃にようやく自分の目も肥えてくるのか、うまくできなかったところに気づくのだが、キミ子方式では、過去は振り返らない。

 夜は、レポート発表。トップは、私と斉藤君の発表。昨年、富山県で行われた精神障害者リハビリテーション学会で「絵を描いてリカバリー」と題して、演題発表をして好評だった。キミ子方式の絵をクッキングハウスの日常の活動プログラムとして取り入れてきた。キミ子方式の絵を描いて、私たちも20年になる。描いた絵は展示し、生き生きした絵のある風景も自然になっている。当たり前の人間として、楽しく生きていくというリカバリーにどのように効果があったのか、なんとか科学的に体系的に証明したいと満足度調査を行った。その結果、高い満足度が得られたことがわかり、当日は実際に描いたたくさんの作品を会場の人にも見てもらいながら発表した。そのことを、キミ子方式の合宿研究大会で報告した。斉藤君も、当事者として絵を描くことが安心できる時間になっていることを発表した。

 みんなとても注目して聴いてくれた。そして斉藤君に「いっぱい教わって良かったよ」と、群馬から参加の静野さんが言った。「斉藤君の声がきれいで、言葉づかいも上品ですてきね」ともほめてくれた。

 今大会が初めての斉藤君も、自分の思いを語りそのことを受け止めてもらう中で、緊張がほぐれていき、たくさん感想文を書いていた。全国各地からの参加者と4人部屋での泊まりも、いい経験になったことだろう。大会参加費は、クッキングハウスのメンバー研修費を活用した。春から、アルバイトにチャレンジしているので、宿泊費は自分の働いたお金で参加した斉藤君。このことも大切なリカバリーへの道だと思う。

 来年は、韓国の釜山で合宿研究大会が実現できそうだ。韓国でまた絵を描いて交流できるのを楽しみにしている。(松浦幸子)

斉藤(さいとう)敏(とし)朗(あき)さんの感想
 涼しい教室に戻り、題材を観察しながら色づくりをしていると、何だかクッキングスターでのキミ子方式を思い出しました。今年の2月までは参加していたのに、仕事をするようになって半年が経ち、仕事の内容、社会人としてのマナーを覚えることに必死になる日々を送っている内に、いつの間にかゆっくり絵を描くことも忘れていました。改めてクッキングハウスとの出会いから、キミ子方式がコミュニケーションの練習の場になっていたこと。現在、覚束ないけれど仕事にまで就けるようになったこと。そこまで回復して来たことを交えて、発表しました。

 次に、韓国の小学校でのキミ子方式が発表されました。いつも走り回って、絵を落ち着いて描けない男の子が、自分から題材を探して落ち葉を観察している話は、感動しました。

 また、キミ子先生の発表では、世界の子供たちが、戦争や貧困、飢餓の中でもいきいきと絵を描く姿が浮かんできて、思わず聞き入ってしまいました。

 この3日間、キミ子方式の絵に久しぶりに触れて、絵を描くことの楽しさを改めて感じることが出来ました。仕事をしながらも、休日に絵をゆっくり描く。そんな趣味に、これからなってくれればいいなと思いながら、今回の旅が終わっていきました。
 最後に、今回の旅に誘ってくれてた松浦さん。参加に当たっていろいろと支援して下さったみなさんに感謝しています。ありがとうございました。

・リハビリテーション学会の文集「絵を描いてリカバリー」が載っています。 200円

〜暑い夏でも、元気に活動している私たちの日常です〜

<新商品とギフトセットが好評・ウォーキングで健康作り>(ティールーム)
 柚子、コーヒー、チョコミントの味に続くヘルシークッキーの新商品は、“シナモンレーズン”です。ラムレーズンをトッピングし、シナモンの香りが上品なクッキーは、秋に向けてのおすすめです。もう一つは、“フロランタンショコラ”です。焙煎したカカオ豆の粗挽きとアーモンドが香ばしく、チョコレートの甘みが引き立ちます。ギフトセットも好調で、アンナプルナ農園の緑茶かほうじ茶を選んでいただけるようになり、組み合わせの幅が広がりました。
 今年度から始めたウォーキングは、藤の花で有名な国領神社や野川や調布に新しくできた「こころの健康支援センター」の見学に行きました。少人数でのウォーキングですが、ティータイムを兼ねているので、ゴール地点でのお茶は楽しい時間になっています。雨が降れば、ティールームでの体操の時間もにぎやかです。手足がぶつかり合いながらの体操ですが、SSTに参加してくださったお客様も体操に参加してくれて、今までとはまた違った交流の輪が広がっています。(小林葉瑠)

 <夏野菜たっぷりでお待ちしております>(レストラン)
 夏を迎え、レストランのおかずには夏野菜が盛り沢山です。今年なかなか暑くならず野菜が育つのが大変だった織座農園からも、7月からはたくさんの有機野菜が届きました。ズッキーニやトマト、夏大根、いんげん。ズッキーニの肉巻きや、夏野菜カレーは今の季節ならではのメニューです。「野菜がとってもおいしい。」「織座農園の野菜は、火曜に届くのなら、水曜をねらって来ますね。」と言って下さるお客様もいました。他にも賛助会員や運営委員の方、メンバーのご家族から頂いた手作り野菜が、食卓を彩り賑わせてくれます。ありがとうございます。
 メンバーとのパートナーシップで運営しているレストラン。今年度はメンバーウェイトレスが増え、張り切って接客しています。明るい笑顔と、さりげない会話でお客様と接している姿は素敵です。
 たくさんの方にレストランで食事をして頂き、元気になって暑い夏を乗り切ってもらえたらうれしいです。お待ちしています。(林由佳里)
 
 <各地からお客さまがいっぱい>(クッキングスター)
 毎日開かれるスターの夕食会と、SSTやメンバーが司会進行をして何でも気持ちを話せる言いっぱなし、聴きっぱなしの「何でもミーティング」は、メンバー以外のお客さまにも人気のプログラムです。
 7月から8月にかけて、札幌から2人の兄弟が来てくれました。調布に住む親戚の家に宿泊しながら、火曜日は夕食とSST、金曜日は夕食と何でもミーティングに参加。札幌に帰る前日、何でもミーティングに参加された兄は、「苦しいのは自分だけじゃないことがわかり、勇気づけられました。」弟は、「幻聴との付き合いかたも参考になった。自分のことを話せてよかった。札幌に帰ったら、クッキングハウスのような場に参加してみたい。積極的に居場所を探してみようと思います。」と感想を話してくれました。
 お客さんの中には、当事者のご家族や市民の方もいらっしゃいます。どなたでも歓迎。スターで一緒に夕食を食べながら、気持ちを語ったり学んだりすることで、みんなが元気をもらい合っています。(田村陽子)


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