クッキングハウスからこんにちは No.113

目次(青字の記事を抜粋してあります)2007年4月16日発行

目次
巻頭言 総会で会いましょう・目次…1、能登半島地震お見舞い・動くクッキングハウス・・・2、
2007年度の抱負・・・4〜5、レポート 河津旅行、メンタルヘルス報告、関川村SST…6〜9、
 イベント・文化学習企画 メンタルヘルス市民講座、笠木透さんコンサート、狩野さんからの手紙・・・9〜11、
総会のご案内・松浦幸子講演スケジュール・各地からありがとう…12


<動くクッキングハウスin冬の小谷村(おたりむら)>
〜小さな活動がゆっくり始まった〜

 長野県小谷村は、スキー場で有名な白馬の隣、日本海まで塩の道があるという谷川沿いの自然の美しい村。障害をもった人たちと共に、自給自足の生活をしている共働学舎のある村。

 松本で当事者たちの居場所活動をしていた高橋きよみさんが、ご主人の実家のある小谷村に定住して農業をする覚悟をされた。決意するまでには、いろんな試練があったと思う。

 高橋きよみさんの素晴らしいところは、あきらめないこと。村の人たちと、精神障害者サポーターの会「カモミール」で交流し、少しずつ輪を広げ、理解をしあえるようにと活動していった。精神障害者デイケア「エーデルワイス」との共催で、心の健康を考えるセミナー「一人ひとりが心豊かに暮らせる村にしていこう」が実現したのだ。「30名足らずの会になるかもしれないけれど、来ていただけますか」という手紙に私は「もちろん行きます。小さい芽ほど大切にしたいから。ゆっくり育っていくといいですね」と答えた。

 3月7日、斉藤敏朗さんと動くクッキングハウスの出発。松本から大糸線に乗り、各駅停車のはるばるの旅。小谷村は雪だった。申し込みは80名を超え、当初の予想よりずっとふくらんでいる。村長さんが、もっと広い会場のほうがいいのでは、と心配してくれたが、「混み合っているくらいのほうが、お互い元気になれていいのです」と私。

 カモミールの皆さんは、明日のお客さまのために豚汁を作り昼食の準備万端。夕方の役所の廊下に豚汁のおいしい匂いがして、心をこめてこの会を準備していることが伝わってくる。

 宿泊は、白馬乗鞍スキー場のゲレンデの中のペンション・アンデス。ストーブの薪が赤々と踊っていて「不思議なレストラン」のうたを思い出す。アンデスのおかみさん中丸亀恵子さんも、カモミールの会員なのだ。夫婦で都会から小谷村の山に魅せられて移住し、ペンションをやってきたのだという。夕食交流会は、エーデルワイスとカモミールの皆さんとで、アンデスのおいしい料理を囲みながらゆっくり語り合うことができた。ストーブの薪の燃えているあたたかい夕食会が忘れられない。

 3月8日、10時から4時までのセミナーの始まりだ。私たちを歓迎するかのように、雪が降っている。控え室から見ていると、村の役場の駐車場はどんどんいっぱいになり、他の駐車場に移っている。村以外の長野市や松本市からも、参加者が増えてきた。何よりも、今回の企画をしてくれたエーデルワイスとカモミールの皆さんへの勇気の湧くプレゼントになったなと嬉しい。

 午前中は講演。クッキングハウスの実践を語りながら、自分の足元でできるところから、小さなところからやっていけばいいとメッセージを送る。当事者の思いを代表して語るのは斉藤君。長い間の引きこもりから、クッキングハウスに出会い、SSTを学び、仲間と毎日の活動を共にしながら受け止めてもらえたことで、前向きに生きる気持ちへと変わっていった話。隠さないで生きる勇気をもった時、当事者としての誇りをもてるようになった。斉藤君の澄んだ声が、会場の人たちの心にストンとおちていく。
 午後は、SSTワークショップ。

     地球のように円く座ろう 円陣に
     最初の緊張 ウォーミングアップがほぐしてくれる
     チャームポイントで自己紹介 ほめほめゲームも楽しいね
     うまくできたこと やってみたこと 報告タイム
     仲間の報告 嬉しいね
     さあ練習 伝えたい気持ちや 楽にとりたい行動いっぱいあるけど
     できることから ひとつずつ
     パスあり 質問はいつでもどうぞ トイレは一言ことわって
     良い練習ができるよう 助け合おう
     いいところはすぐにほめて 自信がつくから
     秘密も守ろう SSTは学びの居場所
     練習したから大丈夫 リラックスしてやってみよう
     失敗しても大丈夫 またトライしてみよう
     輝いた顔 ホッとした顔 納得の顔 
     一言ずつ気持ちのシェアリングで落ち着いた
     SSTは仲間の宝物 何よりの財産
     やっと希望が見えてきた 前向きに生きてみよう
 
 この詩を最初に披露したら、会場の雰囲気がいい。SSTへの興味と関心が高まっていく様子が笑顔から伝わってくる。「共通のいいところ捜し」と、相手のいいところを見つけてほめる「ほめほめゲーム」は、90名を超える会場の皆さんに実際にやってもらう。皆さん上手にほめることができて、感心する。会場の空気があったかくなった。

<課題の練習>

 斉藤君の課題練習をデモンストレーションする。早稲田環境研究所の年度末の事務局補助のアルバイトに決まった斉藤君。3月6日初日、一日目の電話応対で、相手の名前も連絡先も聞けずに落ち込んでいた。「でもこのアルバイトは自分の社会復帰のために、石にかじりついてもやり遂げたいんです」と、決心の気持ちを聞けたので、「それではやり遂げられるために、電話の応対ができるようになる練習をしましょう。会場の皆さんが応援してくれるから大丈夫」と斉藤君を励ます。
 最初の練習は、認知に働きかけて前向きな気持ちになろうと、電話が鳴ったらすぐに自分に言い聞かせる言葉を見つける。

         落ち着いて 落ち着いて 大丈夫 大丈夫
           さあきたぞ メモ用意  深呼吸して

 会場からあがった言葉をいくつか黒板にメモする。斉藤君が、そこから今適当だと納得した言葉を選ぶ。「落ち着いて 落ち着いて メモ用意」を言い聞かせる練習。その真剣さんに胸を打たれたと、会場からは感動のほめ言葉があがる。
 二つ目の練習は、電話応対の時に必ず聞くことを確認する。「早稲田環境研究所の事務局の斉藤です。いつもお世話さまです。○○の△△さんですね。ご用件は○○○ですね。ご連絡先は○○ですね」。会場から先方の電話主になってもらい、斉藤君の練習のよいところを見つけてほめてもらった。

「すぐにメモを用意して書き込んだ」
「とても丁寧な応対だったことが、言葉から伝わった」等々。明日からのアルバイト2日目に行く斉藤君にとって、最も適切なタイミングに、しかも大勢の人たちに共感して受け止めてもらい、練習できたことが何よりの応援となった。
 「明日から、今の練習のようにやってアルバイトをやり遂げます。ありがとうございました」と心から喜びの挨拶をする。斉藤君は、アルバイトを続け表情もきりっとし、4月には契約延長をすることができた。小谷村のみなさんに、希望としてこのことを報告したい。(松浦幸子)


2007年度は、夢や希望のあるこんな一年にしたい
〜クッキングハウス・各所の抱負〜

<第一クッキングハウス・ティールーム>
〜ティールームの3つの柱〜

みんなでひとつになって20周年を迎えたい!
 夢いっぱいのタペストリー・・クッキングハウスの20周年を記念して、歴代の黄色いのれんをアレンジしたタペストリーを、一針一針にみんなの思いを込めて作っています。完成品は20周年の舞台でお披露目です。
 楽器でうたを盛り上げたい・・メンバーもスタッフも、いろいろな楽器(トーンチャイム、クラリネット、ピアノ、リコーダー、オカリナ)を練習してレストランのクッキングバンドに出張し、20周年に向けてみんなで作った歌を盛り上げていきたいです。

健康になれるティータイム
 今年度のティールームのティータイムは、健康にスポットを当てます。昨年度より健康維持のために行ってきたストレッチを発展させて、今年度は第三水曜日のSSTが終わったあとに、“ティータイム付きウォーキング”に挑戦します。みんなで飲み物といつもよりちょっと豪華なお菓子を持って、それぞれのペースでウォーキング。青空の下でのティータイムは、きっと楽しい時間になるはず。もちろん、いつものストレッチも継続していきます。

新商品を開発して売上アップが目標です!
 柚子味、チョコミント味、コーヒー味に続いて新しいクッキーを開発して、お客様に「今度はどんなお菓子があるのかな?」と楽しみにして来てもらえるような1年にしたいです。そのためにも、厨房・ウェイトレスミーティングを充実させて、みんなが自由に意見を言い合える場を大切にしていきたいです。


<第二クッキングハウス・レストラン>
〜更に充実したエコロジーレストランを目指して〜

「おいしいねから元気になる場」を合言葉に
 今年度も、「織座農園」「くりちゃんの店」の有機栽培の野菜や魚、「長谷川農場」のお米、「どんぐり牧場」の卵、「生活クラブ」の肉や調味料など、できるだけ安全な食材を使ってからだにやさしい家庭料理レストランを作っていきます。手作り味噌、自家製の梅酒などもメンバー、スタッフ、ボランティアの共同作業で作ります。
 また合成洗剤は使用せず、廃油を利用した手作り石鹸で食器を洗ったり、水道・電気の節約の工夫をしたり、地球にも優しいエコロジーレストランづくりを目指していきます。

子育て中のお母さんたちも応援します
 小さなお子様連れのお客様も、安心してゆっくり食事を楽しめ(時には子守も引き受けます)、一人で食事をしに来ても暖かい雰囲気の中で淋しくありません。クッキングハウスにいらしたお客様に、よい時間を過ごして欲しいというみんなの気持ちが一つになった「よい場の空気」を作っていきたいです。つらい思いでいらしたお客様の気持ちを受け止められるような、カウンセリング付レストランの名にふさわしい、人に優しい接客を目指します。
 今年は20周年の記念すべき年です。これまでの積み重ねてきた「不思議なレストラン」の良さを、さらに地域に発信していきたいと思います。そしてその活動がメンバーとのパートナーシップで成り立っているのだということを、もっと多くの人たちに伝えていきます。

<第三クッキングハウス・クッキングスター>
〜当事者主体の活動に向けて、更に学んでいこう〜


ピアカウンセリングの充実
 スターの活動は、20時まで開いている夜の居場所、毎日開催の夕食会、そしてSSTやなんでもミーティングなどの文化学習活動を大切にしています。その中でも自分の気持ちを相手に伝えたり、話を聴いたりすることでお互いが支えあい力をつけあってきました。
 今年度は、更にその力を伸ばすことができるように、ピアカウンセリングなどを体系的に学ぶ機会を準備します。

クラブハウス学習会の充実
 みんなが主体的に学ぶ場のひとつが、毎月第4水曜日に行われている「クラブハウス学習会」です。今年度は、メンバーそれぞれが自主的に集い、自分たちの活動を自分たちの言葉で発信できるようにプログラムを一緒に考えていきます。

心をあわせて20周年を祝いたい
 クッキングスターでは、新刊の発行に向けてメンバーから寄せられた原稿編集や、記念コンサートでうたう私たちの歌づくりをすすめています。メンバーからは、生き生きとした文章がたくさん集まっています。ティータイムや夕食後の語り合いの時間に、うたの練習もし、大きな舞台から皆さんに気持ちが届くよう、言葉を大切にうたえるよう、練習しています。メンバーとスタッフが共に力を合わせ、20周年を祝う会が成功するよう前進しいきます。

5回シリーズで学ぶSSTワークショップin「ままや」
  〜SSTを一年間継続して学んでみよう!
          新潟県関川村で5回シリーズのSST講座が始まりました〜

「ままや」で開催される5回シリーズのSST講座、第一回目の報告です。私は、アシスタントとして同行。雪の降る中、27名の方が参加されました。今回は、SSTの入門として「聴く」ということを理論的に、松浦さんの講義から学びました。実際に、2人1組でお互いの話を「聴く」体験をすることで、反論したり自分の意見を押し付けたりすることなく相手の気持ちを受けとめて共感することが、安心感をプレゼントすることなのだということがわかりました。

 始まりのウォーミングアップ、気分調べでは「人前で話すのが苦手で緊張しています」「日頃の生活で疲れ気味です」「家族のことを心配しながら出てきました」「興味あるけどなかなか来れず、友人に声かけられて来る事ができました」「背中が痛くて気分はイマイチだけど、言葉にして自分の気持ちを知っておくのは大事だと思います」という声。

 松浦さんの分かり易く、具体的な講座で話すこと、聴いてくれる相手がいることによって気分がリラックスできて、昼食時間には、初対面の方たちも賑やかに会話が弾みました。一品持ち寄りの昼食会は、新潟の美味しい料理が頂けてとてもうれしい時間でした。

 午後からは、実際に課題を出し、ロールプレイの時間がありました。職場での悩み、家族のこと、自分のことを責めてしまい辛くなってしまうこと。でも今は、ジグザグの過渡期であり、順調に進んでいるのだと自己会話して自分を安心させるSST。「SSTは、マニュアルを覚えることではなく『今できること』を練習する場。」と、松浦さん。練習場面を見て「皆の応援」を貰い「知恵をだし合う」ことで、課題を出した人もその場に参加した人も、力が貰えチャレンジしてみようという勇気に繋がるのだということが実感できました。

 講座の終わりのシェアリングでは「皆が仲間だと思えたから、また来たい」「共感しました。SSTは、奥が深い」「今日学んでみて、普段私は、自分の価値感を相手に押し付けているところがあるなと気づいた」「皆、悩み多く暮らしていることがわかった」「いい苦労の繰り返しで自分も成長できると感じた」「学んでみて、混沌としたものがストンと入った、楽になれた」「朝の緊張がほぐれていく感じがして良かった」「背中の痛みが取れたから不思議です」「チャレンジする勇気を応援してもらえる場。来て良かった」と、嬉しい声が沢山聞けました。

 関川村で、始まったばかりの講座。次回がとても楽しみです。また新しい学びと出会いがあることに、胸の膨らむ思いです。(有光梨紗)

今後の日程
5月20日  10:50〜16:10  自分の気持ちを伝える
7月15日  10:50〜16:10  自動思考について
9月16日  10:50〜16:10  怒りのコントロール、折り合いをつけること
11月18日 10:50〜16:10  問題の外在化 自分自身で、そして共に
※問い合わせ 「ままや」平田ゆかりさん 090-8805-5749


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