クッキングハウスからこんにちは No.110

目次(青字の記事を抜粋してあります)2006年10月10日発行

目次
巻頭言 19歳になりました…1、ピースなレポート…2〜5
 動くクッキングハウス 岡山県倉敷市・ぜんせいれん浦河大会…5〜7
レポート 織座農園研修旅行・健康教室・・・7〜8、イベントのおしらせ・
文化学習企画・「やさしい憲法の話」・20周年に向けて「うた作りコンサート」・・・9〜10、
松浦幸子講演スケジュール・お知らせ…11、紹介されました・各地からありがとう・スタッフ紹介…12


<ピースなレポート>
文化座と共にカナダの旅 (ブライス バンクーバー)
  「一緒に生きていくために芝居が必要なんだ」(前編)    


<小さな村の劇場が心の居場所>
 広大なカナダの国に、ブライスという人口九百人余りの牧場の村があり、そこには農民達が大切に守り育ててきた劇場があるという。鈴木光枝さんが「びっくり箱」の芝居でブライスを訪ねられ、深く感動されたという。農業をしながらの人生には、喜びも悲しみも失敗も挫折もあり、私も農家で育って都会に逃げ出したから、あの重苦しさはよくわかる。でも、その思いを表現することができたら、あるいは共感してくれる人がいたら、また前向きに生きていく力になるだろう。私は、鈴木光枝さん主演・文化座の「おりき」を最初に観た時の衝撃を思い出す。朝から晩まで田畑にはいつくばり、草取りをしていた母が舞台にいたのだ。母の人生が芝居になる程の価値あるものだったのだ。「おりき」が輝いてみえた。きっとブライスの農民達もそんな思いで自分達の日常を舞台で観て、深く納得したから、自分達の劇場として守り続けてきたのだろう。

 トロントから2時間、見たこともないスケールのすさまじい稲光の中を走って、夜ブライスに到着。小さな街のメインストリートに劇場があった。劇場スタッフとホストファミリー達が、大きな体と人なつこい明るい笑顔で迎えてくれた。包みこむようなあたたかさがとても自然で、はるばるやっと着いたという思いがあふれ涙がこぼれてしまった。

 私と愛さんは、ブックアウト家に招いて頂く。母のハリーナと娘のサーラがハグしてくれた。ご主人のマーチンは獣医さん。ブライス郊外の大きな家。広い庭にはマーチンの好きな鉄道模型が池やトンネル付きで敷いてあり、日本の新幹線にも関心を持っておられた。四人の子ども達にプラスして、タイからの養子二人の六人の子ども達との質実な暮らしにご一緒させて頂き、包容力の深さを感じた。「何か飲みますか?」と最初の夜に聞かれ、愛さんが「ワイン」と答えると、冷蔵庫の中を開けて見せ、ジュースと水があると教えてくれた場面も思い出す度におかしい。お土産の日本手拭で、愛さんがいろんなかぶり方を実演。「泥棒かぶり」も、私が電子辞書で見せるというコミュニケーション。ごぜ三味線に感動したマーチンが、ビオラを弾いてくれたホームステイ最後の夜。家中に家族の写真の貼ってあるあたたかい家庭のことをずっと忘れない。

 夕方、ブライスの劇場での村人との交流会。村人達が一品ずつ持ち寄り、私達に先にどうぞとすすめてくれ、その間穏やかに待っていてくれた。障害をもった人も貧しい人も混じっていた。ここは、村人の心の居場所なのだ。クッキングハウスと同じ居場所がここにもあったのだ。私はすっかり嬉しくなった。言葉はわからなくても、包み込む優しい空気は十分に感じることができる。

 文化座のごぜ三味線を村人が集中して聴いてくれた。日本の貧しい時代、目の見えない女性達が自立して生きていくために、日常生活と三味線と唄の芸を厳しく仕込まれ、旅芸人として一緒に村々をまわった。ごぜさん達は稼ぐためだけではなく、自らを励まし、自らの心を癒すために唄っていたのだろう。遠い地ブライスの村人とごぜ三味線とうたを聴いていると、私の体内の奥深い記憶の中にある音楽が聴こえてきたようで涙があふれた。終わると村人が全員立ち上がり、拍手してくれた。嬉しかった。

 夜8時から開演の、ブライス芸術フェスティバルには全カナダからお客がやって来るという。900人の村なのに、450席が満席。この夜の出し物は、「アナザー・シーズンズ・ハーベスト」。大農場を経営して儲けたいと考える父親と、小規模でも直接消費者につながる農業にしたい息子との経営論争。そこへ狂牛病の問題が入り大混乱、という筋書きなのだが観客はよく反応し、絶えず笑ったり、うなずいたり、芝居と一体になっている。こちらは、言葉の壁でどのタイミングで笑えばいいのかわからず困った。でも気取りのない劇場の雰囲気の心地良さは、東京では味わえないものだった。この劇場の文化を守り育てるのが、村人の生きていく誇りなのだとわかった。〜次号後編につづく〜(松浦幸子)

今年の夏も憲法フォークジャンボリー
ピースナインコンサートでうたって踊った

 準備で忙しい私達に、笠木透さんから「甘えたりしないで、偉ぶらないで、周りの人たちを助けながらやって下さい。苦しいでしょうが、戦争よりはいいのです。」とメッセージが届き、本当にそうだとストンと胸に落ちました。暑さなんて気にしないでしゃんとなりました。 


ヘルシードリンクで乗り切った 

 今年の夏で、プレコンサートから数えて3度目になった水上音楽堂での憲法フォークジャンボリー。メンバーもスタッフも場所にもすっかり慣れ、今年もレストランで作ったごはんや飲み物を売ろう、コンサートを楽しもうと、2日間で約20人のメンバーが参加しました。

 今年のお弁当コーナーは、一日目に玄米赤飯とお赤飯。二日目はそぼろ弁当を売りました。売り子はメンバーと、明治学院大学の実習生。チームワーク良く、行商もしながら売り切りました。

 ドリンクコーナーは、おつまみ付のうめ9セット。飲み物は、松浦さんのお家の無農薬の梅と玄米酢で作った梅酢ジュースと梅酒が選べます。ボランティアの研さんが、大きな氷をどんどん割りながら大活躍。

 夏の暑さで疲れた体に染み渡るのか、梅酢ジュースは特に好評でした。舞台でも舞台裏でも大活躍の雑花塾の佐藤せいごうさんも、「これで体力が維持できるんだ。」と何杯もおかわりしてくれました。売り上げも過去3回の中で一番よかったことも嬉しいことでした。

 2年間続いている活動の中で、このコンサートを楽しみにしているメンバーや、売り子に徹しようと来てくれる人。ふーてなにーコーナーで舞台に出るのを楽しみにしているメンバーもいます。私たちがふーてなにーでうたった「不思議なレストラン」と「八丈富士」を会場のみなさんが集中して聴いてくれました。(林由佳里)


平和グッズと蓮根にちなんだお菓子が好評!

 今年のお菓子の目玉商品は、はす茶入りのピースケーキと「平和ッフル」と命名した手作りの梅ジャムや、ゆずジャムをはさんだワッフルです。ワッフルには、蓮根の会のトレードマークの焼印も入り、昨年よりきれいに出た焼印の仕上がりに大満足。その嬉しさの勢いで、「当日はお楽しみくじ引きもやろう!」と、三角くじを作ってさらに盛り上がりました。2年目の今年は少し余裕ができ、楽しむことができました。

 お菓子の他には、キミ子方式の平和はがきとクッキングハウスオリジナルバンダナ、ピース9ペンダントは色の種類も増えて好評でした。「去年買ったのよ!」と、ペンダントをつけて来て下さった方もいたり、コンサート会場を見渡したときに買ったばかりのバンダナをつけている人がいると嬉しくなり、お菓子の行商の時にはついついその人めがけて売りに行ってしまいました。(小林葉瑠)


この街で生きる〜当事者として市民として
当事者の大会 ぜんせいれん・浦河大会で感じたこと

浦河赤十字病院精神神経科部長 川村敏明先生の基調講演はとても印象に残りました。

・本人の悩みや問題を本人の言葉で語ることで自分のポジションが見つかって安心する
・本人の問題は本人に、地域の問題は地域に返していく。すべきこと・しなくて良いことの見極め。
・悩みや問題など多くの苦労と出会い、必要な失敗をして多くの人たちとつながっていく。そのつながりが肯定的な気持ちを生む。
・ 当事者活動を通じて精神保健福祉や医療の世界が風通しのよいものに変わる。「主役は本人」の当事者研究には当事者の誇りがあり、そこには豊かさがある。

 表現方法やカラーは違いますが、クッキングハウスも同じ理念のもとで活動をしていると思いました。常日頃、松浦さんが語っている内容と同じだと感じました。私たちの日々の活動の意義が再確認できてとてもうれしかったです。

 浦河べてるの皆さんは大変な苦労をしているにもかかわらず、ユーモアと笑顔にあふれています。有名なべてる祭りの「幻聴妄想大会」がそのことを最もよく表していると思います。自身の幻聴や妄想について、自分の言葉でいきいきと明るく語っていました。会場も爆笑の嵐でした。その笑顔の背景に川村先生がおっしゃったことがあるのだなと実感しました。私は一支援者として、「しなくてよいこと」までしてはいないか、「治す」ではなく「一緒に考える。応援する」という意識でいるか、今一度考えさせられました。そして当事者の力、弱い者の立場から発信する福祉文化が今の時代にかけがえのないものであり、危うい閉塞感を感じる世の中を変えていく大きな力は、当事者から生まれると確信した旅となりました。この思いを一人でも多くの方々に伝えていくのが、今後の私の使命と思っています。(竹内高子)
 「恋愛と結婚」の分科会で当事者として発表
 〜盛り上がった分科会でした〜


「ぼくの恋愛」 池田明弘                        

 みなさん、こんにちは
東京調布のクッキングハウスのメンバーの池田明弘です。
 僕には34才になる7年越しの恋人がいます。ちなみに僕は40才です。僕は26歳で病気になって、彼女のいない暗黒の時代が28才まで続きました。
 クッキングハウスに通いだして、彼女もメンバーになってやってきましたが、初恋の人に顔つきや雰囲気が似ていてひかれました。
 時々一緒に飲みに行ったり、手をつなぐのに3か月もかかりました。初めは一秒だけ。段々に2秒、3秒と長くなっていきました。様々な思い出をつくっています。
 夢はクッキングハウスで結婚式をあげたいということです。クッキングハウスの仲間の希望になるような結婚をしたいと思っています。
 最初貯金をしていましたが、今はできない状態です。だからデートは工夫して電気釜を買ってご飯を炊いて一緒に食べたりしていました。けんかしたり仲良くしたりの連続ですが、お互いの病気や具合のわるい時も認め合えたからだと思います。
 ずいぶん互いに助け合ってきました。彼女がバイトの面接を受けるとき、ぼくが面接官になってSSTの練習していいところをほめて彼女が合格したこともあります。
「明るくはきはきしていていいよ。きっと受かるよ」とほめてあげたのです。
 僕が風邪を引いたときは、おかゆをかってきてくれたり、僕がメール便の仕事を4年間も続けてこれたのも彼女がモーニングコールして励ましてくれたからです。
うまれて初めてホタルを見て、虹をみて虹をバックに写真をとったり運命的な出会いだなと思います。
 愛の力があれば、どんなことも乗りこえられると思います。
 最近嬉しかったことがあります。彼女のお母さんの、僕への話し方が電話でもやさしくなったことです。SSTで、彼女のお母さんにどんな風にあいさつして、話しかけたらいいか練習しました。
「お母さんが産んだ娘さんだから素晴らしいですね」とほめることをちゃんと言ってあげたいと思っています。ぼくたち2人だけの問題でなく、結婚ということになると家族との付き合いも、とても大事なことなのだとわかりました。
 坂本龍馬が原点です。相当つらい時にぼくを励まし、勇気をくれました。
 ご清聴ありがとうございました。

「前頭前野を鍛えよう」
みんなで学ぼう!9月の健康教室

 9月の健康教室は、ちょっと趣向を変え、みなさんに馴染みのある古典を音読し楽しみました。最近、「脳トレ」といったゲームや「おとなの計算ドリル」が人気です。そして、「読む・書く・計算する」といったことが脳の活性化につながると注目されています。

 音読したのは、清少納言の「枕草子」や小林一茶の句、「万葉集」から選んだ歌などです。練習もしないで声を出してみたのですが、みんなすらすら上手に読むことが出来ました。「枕草子」では、春の段・夏の段など、自分の好きなところを選んで読みました。ことばの中に風景や匂いまでも思い浮かぶような、心地よいリズムがなんとも言えません。古典の難しい言い回しも、リズムに乗るととても滑らかです。

 亀田さんは「頭部の手術後の後遺症で少し麻痺が残ってしまった夫に朗読がよいのでは」と参加。夫の秀則さんは、すっと起立してプリントを両手に持ち、滑舌よく「春はあけぼの。ようようしろくなり行く、山ぎわすこしあかりて・・・」と、読み終えた後は明るい爽やかな表情です。

 クッキングハウスでは、通信や手作りの旅行文集ができあがると、みんなで読み合い、山手線ゲームで声を出し合っています。 ひとりで黙って読むよりも、感動や雰囲気が伝わってきます。日頃の活動が脳を元気にしていたことにも気づきました。時々は、文学に親しむ時間を作ってみんなで朗読会をしたいと思っています。(田村陽子)






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