別荘や、夏の避暑地として思い出す軽井沢町からの講演依頼。少しドキドキしながら、めったにはかないスカートで出かけた。長野新幹線軽井沢駅で出迎えてくれたのは、思いがけない岡田さん母娘だった。数年前、娘の病気が始まり人生の突然の嵐に途方にくれてクッキングハウスを訪ねてくれた。出来事を受けとめ、病気を学び理解し、前向きに生きていくことを応援した。
その後、岡田さん一家は娘のペースに合わせ、人生をスローライフに切り替え、軽井沢町に転居した。陽に焼けた笑顔と、からだ全体から太陽の香りがするようでまぶしい。娘さんもすっかり明るくなり、病気のこともユーモアいっぱいで語ってくれる。キャンプもできる車を運転しながら、岡田さんは今の暮らしを語ってくれた。
「都会に住んでいた時よりお金がかからない暮らしなのよ。地元の野菜も安いしね。夫も週一回だけ、仕事で東京に行くけどあとは家で出来るスタイルにしたの。新幹線はもったいないから、横川駅から在来線に乗っていくの。娘は、上田にあるサポート校で自分のペースで学んでいるのです。軽井沢町の家族会や患者会のグループで仲間もできて、絵を描いたり音楽療法をやったり、福祉センターで喫茶をやったりね。ここは、別荘地でリタイヤした後に永住する人も多くて、ボランティアをしたいという人の意識も高いのよ。もう、都会に戻ろうとは全然思わないわ。」
浅間山の見える緑の風景が心地よく空気も爽やか。岡田さんたちに、この地でいい人たちに出会えて本当に良かった。何よりも隠れていないで自ら飛び込んでいった勇気が素晴らしい。
家族会の活動の中で岡田さんが、私を講演に招びたいと熱心に推薦してくれて、今回実現した。家族会・患者会・精神保健福祉ボランティアの会が、連合団体として共に活動していくことになった記念講演だ。佐藤町長も挨拶の後、時間の許す限り私の話を聴いて下さった。親しみやすく、きめ細かく住民の活動に参加して下さる町長さんだという。来年には、複合施設の中に精神障害者の作業所もスタートするという。合併しないで自立した町だからこそ、できることなのだろうと本当に嬉しくなった。
群馬から瀬下さんや、八千穂村の織座農園からも窪川さんたちスタッフが来て下さり、講演会後の交流会も話が弾んだ。
ボランティアのみなさんが、なんと生き生きとして、意識の高いことだろう。私も軽井沢町が好きになった。今度はSSTワークショップをやりましょうと話す。種を蒔く仕事をしてきて良かったと思える講演会になった。(松浦幸子)
<レポート>夏のピース9なレポート
〜笠木透さんと増田康記さん・ピースナインコンサート〜
今回は、玄米赤飯やれんこん料理の平和ランチを食べて頂きながら、共に生きていくことの意味をクッキングハウスの居場所から考えていこうと、レストランでピースナインコンサート。吉岡さんは、「戦争放棄」の青いのぼりを立て、斉藤君の手描きのポスターが飾られ、お客さまを迎える準備はOK。玄関には、小林さんの育てた花が美しい。ちゃぶ台のある座敷コーナーが舞台になる。舞台のバックには、キミコ方式のイカの絵が飾られ生き生きとして効果的。
笠木透さんのコンサートは、いつもながら話がおもしろい。なかなか次のうたに進まない程だ。九州の筑後川にあった駆け込み寺のチエさんの人生。いつもサンダルばきで迎えてくれた、歴史にも残らない女性。権力を持たない弱い立場の人には、いつの時代にも駆け込み寺が必要。そんな思いが筑後川のうたになった。
「海に行こう」は笠木さんがお母さんを亡くした時のうただという。母は海。海は母の子宮。海は故郷だから、海を汚してはいけない。
悲しい時には、海へ行くといい
淋しい時には、海へ行くといい
あったかな、大きなものに包まれてじんわり泣けてくるいい歌だった。
笠木さんは、昨年体調を崩し腰の痛みで歩くことも眠ることもできなくなった。これでもうコンサート活動もできなくなるかと思った時、ラブソングもうたってみたいと思うようになった。今までにたくさんのラブソングをつくったが、自分でうたうことはなかったという。その中の一つ「この想い」(トム・パクストン原曲)
空が青すぎるのだよ 君はもういない
何もかわらないのに 君だけがいない
さよならも言わないで 行ってしまうなんて
風よ伝えて愛していると さいごのこの想い
「ヒューマン・ライツ」は、みんなで口ずさめる人間の権利のうた。
私たちは なんといわれようと 戦力は持たない
私たちは どんなことがあっても 戦争はしない 「軟弱者」より
戦前、私たちに主権はなかった。特に女性の権利はなかった。戦後になって女性は参政権を得た。そのことを当たり前のように思っているが、戦争をさせない力を集められるのは女性なのだ。しかも非暴力で。私たち女性が平和を実現する力を持っているのだと、後押しされた思いだった。
うたは「ほうせんか」「言葉」「あの日の授業」「軟弱者」「私の島」と続く。たくさんの問題を抱えながら、懸命に前向きに生きていこうとしている気持ちが「うた」になるのだろう。だからうたは、今つくらなければいけない。そんな笠木さんの思いが伝わってきた。上手下手とか、音楽性が高いとかのレベルではない。表現しないではいられないからうたうのが、うたなのだろう。
最後は、「ピースナイン」と「不思議なレストラン」。クッキングハウスのメンバーたちが、お客さまを包み込んでうたう。共に生きている幸せ感が、ひたひたと心に満ちてきた。お客さまが、とてもいい顔をして私たちをみていた。石島さんの平和米(米の一粒一粒に平和と書いてくれました)を、みなさんにお守りとしてプレゼントした。 (松浦幸子)
古川ひろし先生 〜居場所から平和を考える〜
感謝の気持ちといのちの授業
7月19日レストランが9のつく日で平和ランチの日。平和ランチに合わせたイベントを企画しようということで、「居場所から平和を考える」というテーマで古川ひろし先生のお話を伺うことができました。古川先生は元明星学園の社会科教諭、画家そして書家でもあるとても文化的な方。クッキングハウスにいらしても、いつもやさしいまなざしでメンバーと接してくださいます。先生のお話は、平和を1千年も前から考えていた北米の先住民のお話、いのちの授業、そしていのちを大事にする憲法の話へと繋がり、先生の熱い想いがじんと伝わる会になりました。
イロコイ族に伝わる感謝のことば
人びと
私たちは、生きとし生けるものすべてと互いに調和とバランスを保つことによって生かされています。この生命の輪を絶やさず今日ともにここに集い、喜びを分かち合えることに、感謝のことばをささげます。「いま、私たちのこころはひとつです。」
これは、ニューヨーク州とカナダをまたぐ地域に住む先住民、イロコイ族に古くから伝わる「感謝のことば」だそうです。「人びと」についてだけでなく、母なる地球、水、魚、植物、畑の作物、薬草、動物たち、樹木、鳥、風、雷、太陽、月、星、こころの師、大いなるいのち、私たちを囲む自然のすべてに感謝の気持ちをささげ、すべての項目について「いま、私たちのこころはひとつです。」という言葉でまとめられます。イロコイ族は何か集会や議論を始める前に、まずこの「感謝のことば」を読み上げるそうです。そしてなにかの決断をするときは、7代先のいのちのことを考えて物ごとを決めるのだそう。7代先と言ったら、孫のそのまた孫の、そのまた孫の代を想像するということです。その精神を受けついでいる人がこの地球にいるという感動がじんわりと伝わってきました。
いのちの授業
私たちのいのちはどこから来ているの?誰もが父と母から生まれている。自分を下に父と母を上に書いて、そのまた父と母をその上に書いていくと一本の大きな木のように、どこまでも広がっていきます。その祖先のどこかひとつが欠けているだけでも、自分は生まれてこない。そして、いまここでいのちをなくしたら、自分につながったいのちの広がりは絶えてしまう。それは人類が生まれ、人類のもとになる生命が地球に誕生したときまで広がっていくのだと、古川先生は話してくれました。今何歳と聞かれたら「地球に生命の生まれたのが40億年前だから、40億と○○歳と答えればいいのですね。」と古川先生。いかに一人のいのちが奇跡的な尊いものであるか、想いをこめて語って下さいました。
いのちを大切にする憲法の話
古川先生は、日本の憲法には9条には戦争放棄、24条に両性の合意に基づく婚姻、25条に生存権をかかげていて、このいのちを大切にすることにつながる憲法の条文はアメリカにはないことも話して下さいました。アメリカからの押し付けだと言う人もいる憲法だが、国会で審議され、きちんと順を追って交付されたみんなのものであることを伝えてくれました。
今日本は、平和は力によって得るものだととらえ、憲法も変える動きをしている。しかしイロコイ族に伝わる7代先のいのちを考え、自然や人々に対する尊敬と感謝に根づいた考えをしたならば、今大切にすべきものは何であるか。今生きているものとしてそれを考え合う責任が私たちにあるのだと。先生の言葉は語っていました。
先生は、ぜひ憲法を自分で書き写してみて欲しい、そしてそこに込められた言葉の重みを味わって欲しいと言います。レストランの漢字グループでもさっそくやってみたいと話しています。みんなが書き写した憲法の条文から何を感じたのか、また次回レポートしたいと思います。(林由佳里)
子どもたちも一緒にランチタイム
〜お母さんを応援するレストランです〜
最近のレストランのランチタイムは、お子さん連れのお母さんたちで賑わっています。「友達から、ゆっくり出来るレストランがあると聞いてきました。」「母と子が共に安心して食べられる料理だから。」「雑誌を見てきました。」「以前から気になっていました。」等、お子さん連れの来客が増えています。
そんなお店の様子を見ていたあるメンバーが、甥っ子の小さくなった子供服が役に立てばときれいにラッピングをして持って来てくれました。
赤ちゃんが泣いていると、誰よりも早くそばに行ってあやし始めるメンバーもいます。慣れた手つきであやす仕草は、ベビーシッター顔負けです。「赤ちゃん、赤ちゃん」と声をかけると、赤ちゃんはそのメンバーの顔をじっと見つめています。畳に子どもを寝かせ、ゆっくり食べることもできます。そんな光景を見守っているお母さんたちは、楽しいランチタイムを過ごしている様子です。
メンバーと赤ちゃんの様子はほほえましくて、心が温かくなります。ここはまさに不思議なレストランです。お母さん同士の間で、子どもが一緒でもゆっくりと安心して、ご飯が食べられるレストランがあるという事が広がっているのが嬉しいです。 (原村真子)
7月の健康教室は、狛江のんびりクリニックの乾先生をお迎えして、内服薬に関することを中心に、メンバーやお客様からの質問にわかりやすくQ&A方式でたくさん答えて頂きました。
質問の一部を紹介いたします。
Q.のどが渇き、水をいっぱい飲んでしまいます。くすりのせいですか?
A.精神科のくすりは、のどが渇くことが多いのですが、くすりのせいだけではなく、不安や落ち着かない気持ちのときに、冷たい水やコーラやコーヒーが欲しくなる人が多いようです。気分をのんびりと落ち着かせる方法が他にもあれば、水をあまり飲まなくても済むかもしれませんね。
Q.服用しているくすりで10kgも太った人がいます。同じくすりをのんでいますが、大丈夫でしょうか?
A.具合が悪いときは、緊張が強くそのためエネルギーを使うためにやせる傾向にあります。良くなる経過の途中においては、食欲はあるけれど本来の快活さは無い状態です。元気なときは、同じカロリーでも良く吸収し身につくものです。心配しながらくすりを飲むのはよくないので、主治医と相談してみましょう。
先生からは、困ったことや心配なことを率直に主治医に話すことが大切であること。また、くすりを飲むだけでは病気や障害は改善しないので、生活の工夫(例えばSSTで対人関係を練習するなど)を同時にしていくことが、生活のしづらさと上手に付き合っていくうえで大切であるというお話を頂きました。今回のスペシャル健康教室のQ&Aは、報告集としてまとめたいと思っています。(田村陽子)
今後の健康教室の予定
8月は、健康診断の結果について、個別相談を随時受け付けます
9月16日(土) 13:30〜14:30 「前頭前野を鍛えよう・朗読のすすめ」
場所 クッキングスター 042-498-5177
参加費 ティータイム・資料代として500円