クッキングハウスからこんにちは No.105

目次(青字の記事を抜粋してあります)2005年12月12日発行


「リリー賞」を受賞しました…1、秋の学習特集…2動くクッキングハウス日記…4一人暮らし27人目…6、クッキングハウスのピース9な報告…7
バレーボール大会…9、秋の一泊旅行〜四万温泉〜…9、松浦幸子講演スケジュール…10、イベントのお知らせ…10、田邊順一さん写真展開催中…12、
各地からありがとう…12、年末年始の営業・イベントのお知らせ…12  


秋はたくさん学びました!! 〜学習特集〜


「勇気がもらえた」メンタルヘルス市民講座

 9月から11月にかけて、5回シリーズで行われたメンタルヘルス市民講座の参加者は、延べ約160名。これまでで最も人数が多く、ティールームの小さな会場は、たくさんのお客様と接客をするメンバーと、焼きたてのケーキのかおりで大にぎわいでした。今回の参加者の方々も、アンケート用紙にたくさんの感想。様々な思い、こみあげてくる気持ちを本当に熱心に書いて下さいました。このみなさんの思いの詰まった貴重なアンケートの中から、「最も多かった感想ベスト3」をご紹介させていただきます。

 第1位 具体的でわかりやすかった。49名
「とてもわかりやすく、自分の中にしっかり身につき本当にためになりました」   「とても良く理解できた様な気がします。今思うと、対応の仕方に反省することが多く、もっと早く講座と出会っていたらと思います」「有名な教授や医学博士の講義も受けましたが、当事者、体で感じたお話は、私自身の「体験」となり、これから息づいていくものになりました。」

 第2位 勇気がもらえた。29名
「毎回のお話が、これからの生活の強い味方となり、良い方向にいくことを信じています」「来てよかったと思います。重く考えがちな現実でも、希望を持って楽しく生きていく気持ちって大切なんだとあらためて思いました」「今回で4回目ですが、来るたびに元気がでます」「息子が急性期で入院。どうしようという混乱の気持ちの中、こちらに来て、だいぶ当事者の方々の元気な姿に心が落ち着いてきました」

 第3位 居場所の大切さを感じた。9名
「こんなあたたかい居場所が身近にあって本当にあってよかったと思います。統合失調症になった妹のためにできることをたくさん学び、実践していきたいと思います。」「あたたかい雰囲気の中、心がぽかぽかとしてとってもとってもありがとうございました」「市民講座に参加して常に感じることは、クッキングハウスに来ますと、ホッと安心感をいただけることです。今日もホッとした気持ちを持って帰ります」  (報告 井出歩)


なにわともあれ語り合おう! やったらええやんリハビリテーション 
1000名参加
4人の力がひとつになって 〜大阪リハビリテーション学会 報告〜

 
 今年の私達の演題発表は、「うたづくりでリカバリー 〜たくさんの応援で当事者のうたをCDブックに〜 」です。キーワードは“We are not alone”、“うたは生きる力”、“文化の発信”の3つです。
 CDブックス『へいなよ(泣くなよ)』が出版に至るまでには、約2年に及ぶうたづくり教室、調布と八丈島での録音など、たくさんのプロセスがありました。自分たちの思いを歌にして表現することがリカバリーへの道になる。これが今回の発表テーマです。

 吉岡木綿子さんは八丈島での録音の感想を、「『皆が一生懸命に取り組めば、きっと何か素敵なことが起こる』ということを信じることができました」と、吉岡豊さんは「君はひとりぼっちじゃない」の詩を書いた時の思いを語ってくれました。

 そして4人で歌った「君はひとりぼっちじゃない」。豊さんの力強い歌声に、木綿子さんのやわらかな歌声、松浦さんは自然と思いが手話になって出ていきます。会場の人はしっかりと耳を傾けてくれ、発表の終わりには『へいなよ』を買い求める人だかりができたのです。「歌に感動しました。私も歌で歓迎してもらいにクッキングハウスに行きたいです」と声をかけてくれた人もいました。「私達の思いが伝わった」と実感した瞬間でした。(小林葉瑠)


“おもしぇ福島SST学校”メンバーとともに演題発表!
 
 第10回SST学術集会が11月25日・26日、福島テルサで行われました。早速一日目の午後に『地域生活サポートの場でのSST普及・啓発活動の効果』として、日々の実践の効果をメンバーの体験発表を交えて、7人で一緒に報告をしました。
 
 メンバーの丸山さんは、「母親の気持ちがわかった」ということで、不登校や引きこもりの親たちのSST講座に参加した時のことを話してくれました。斉藤さんは、SSTの練習を通してお母さんの誕生日に「感謝の気持ちを伝えることができた」報告。池田さんは「ヘルパーさんに気持ちを伝える練習をSSTでした」ことで、精神保健福祉を学ぶヘルパー養成講座でも役に立ったといわれたこと。最後に山中さんは「ルーテル学院大学のSSTリーダー研修に参加して」相手の立場に寄り添ったSSTリーダーになれるよう勉強していきたい、という思いを発表してくれました。
 
 これらの実践結果として
1. 当事者の役割が広がり、当事者がサービスの提供者となった。
2. 当事者が他の人の学習を助けたことから自分自身をエンパワーすることができた。
3. 当事者が地域生活での自信を深め、回復力を増した。
4. 地域社会が今求めている「コミュニケーションがもっと楽になりたい」「そのための学びがしたい」という要求に応えることができた。

 このようなことから、日々の地域生活サポートが地域に開かれた実践であり、メンバーの役割が広がったことで自信に結びついたこと。そしてクッキングハウスが、文化を発信する大切な社会資源として位置づけられていくことを希望して、これからも活動を続けていきたいと思っています。(田村陽子)

動くクッキングハウス日記〜in京都〜

 
 2005年秋の動くクッキングハウスは、大盛況。全国各地への密度の濃い旅が続いています。10月26、27日は、斉藤敏朗さんと丸山朋均さんと、京都の旅です。

<不思議なレストランの作曲者を訪ねて>

 一時間程早く着いて「不思議なレストラン」の作曲者山本忠生さんの音楽堂を訪ねました。嵯峨嵐山駅近くのまさに京都らしい、玄関は狭いのですが奥に入っていくにつれ、木の香りのするアトリエがありました。早くに亡くなられたお母さんが川からひろってきて植えたという雑木が窓辺にあり、葉が風に揺れていました。「母さんの木」と呼んでいるそうです。このアトリエで曲をつくってくれたのだなあ、と感動しました。娘さんの山本幹子さんはコロンブ(フランス語で鳩のこと)のはりこやピースグッズの袋やビーズをつくる小さな工房を開いていて、私達もピースマークの手作りの小物入れ袋を買いました。お昼に幹子さんに作ってもらったあったかいうどんのなんとおいしかったこと。一杯のきつねうどんが、私たちの緊張をすっかりほぐしてくれました。

<ともに学ぼう。ゆいまあるでのSST>
 ゆいまある作業所とも交流が深くなってきました。クッキングハウスをモデルとしてランチのレストラン「ゆいまある」を開いています。スタッフ間でのコミュニケーションやメンバーとの気持いいコミュニケーションは、毎日付き合う共同作業所にとって、一番の課題です。緊張しあう関係をなんとか改善できないものかとSSTワークショップを開くことになったのです。3時間のプログラムには、ティータイムも入れて、SSTは誰にでも役に立つこと、一緒に学ぶと楽しい居場所になることを感じてもらえるように、ところどころにウォーミングアップ。チャームポイントで自己紹介や、ほめほめゲーム、全国温泉めぐりなどを入れました。

 すっかりSSTのコリーダーとして丸山君、斉藤君がモデリングをしてくれていて頼もしいです。丸山君は、母に「今はつらくて休んでいるけど、必ず元気になるからわかってほしい」と気持を伝えるデモンストレーション。みんなによかったところを見つけて具体的にほめてもらいます。この場面をみていて安心したのか、グループホームにいるメンバーが、「時には母に会いたい。今はだいぶ良くなって気持も落ち着いてきたから、と母に電話をかけて気持ちを伝えてみたい。」と課題をだしてくれました。練習すると丸山君、斉藤君がすぐにいいところをみつけてほめてくれるので、参加者もいいところのみつけ方がわかったようで、次々に正のフィードバックができました。

 斉藤君は、「クッキングハウスで4年間SSTに参加してきて、初めは課題をだせなかったが、あいさつをしてドアを開けることができたら、無視されるのではないかと恐れずにクッキングハウスに参加できるようになるかもしれないと、はじめて課題をだしました。それから少しずつできるようになることが増えてきて、今は、SSTで課題をだして練習したことをすぐに実行してみるゆとりができました。当初、楽しそうに気楽に話している自分の回りにいる人達のことを自分とは、別世界にいる憧れの人たちだと思っていましたが、人の前で話すことができるようになって、一歩ずつ別世界だと思っていた人達に近づけている自分に気づきました」と語り、みんなの話している輪の中に入る練習をしました。ユーモアもあり、いつの間にか大きな声になっていて、2月の京都で斉藤君に会っていた人達は斉藤君の成長を喜んでくれました。希望のみえたゆいまあるワークショップでした。

〈ハルハウスで当事者との交流会〉
 27日朝、少しの時間でも京都の寺をみてほしい、と小嶋佳余さんが病院のワーカーの仕事の休みをとり、大徳寺に案内してくれました。室町時代の禅寺塔頭で、龍源院の石庭の清らかな静けさが、一瞬のうちに私達を室町時代に連れていってくれました。現代の街の営みの中に、何の気どりもなく古い歴史が息づいています。新緑にこけがしっとり水を含み、時の長さを語っていました。

 大徳寺近くに「ハルハウス」がありました。丹羽さんの家の1階を居場所にして、ボランティアの人達で運営して、町に暮らす誰でもが立ち寄って語り合える場にしています。ここに20人をこえる当事者たちとボランティア、ワーカーさんが集まってクッキングハウスの私達との交流会です。小嶋さんが、つなげてくれた仲間達です。進行は私にまかせるということになり、短かい時間でもひとりひとりが思いを語る会にしたいと、チャームポイントで自己紹介。次に対人関係でうまくなりたいと思っていることをひとつずつだしあいました。ハルハウスで誰か仲間に会ったら協力してもらってひとりSSTでも練習できることをやってみました。「相手を上手にほめたい」「適格に話しが伝わるようになりたい」そして、昼食交流会。みなさんは午後からの講演会にも来てくれるのです。
 
 それにしても小嶋佳余さんは病院と地域とをつなぐいい役割をしています。こんなワーカーさんが病院の中にひとりいてくれるだけで、こんなにいい交流ができるのです。2月の京都ほのぼのSSTも300人を超える満員御礼でした。

<第11回心ときめき芸術祭 左京区こころのふれあいネットワーク>
 京都市障害者スポーツセンターでの大イベントで、400名の方が講演を楽しみに来てくれました。山本忠生さんを先生に「こころ合唱団」が登場。「不思議なレストラン」のときは私達を舞台に呼んで下さり、一緒にうたいました。昨日のゆいまあるのメンバー達もいます。元気よくうたって大合唱になりました。うたの乗りがとてもいいことを発見。
 
私は弱い力を寄せ合って一緒に生きていこうとCDブックス「へいなよ」をつくったことから話しを始め、心病む側から文化を創りたいとやってきた18年間の思いを語りました。
 
文化をつくるには自分の思いを自分の表現で語れるようになることで、そのための学びとしてSSTのデモンストレーション。丸山君は母に気持を伝える場面。斉藤君は今まで全くコミュニケーションのなかった父に、クッキングハウスのこと、「統合失調症を生きる」の本を読んでほしいと渡したいという練習をみてもらい、会場のみなさんにすぐにいいところをみつけてほめてもらいました。お母さん役、お父さん役も会場から協力してもらいました。会場からは「暴力をふるわないで話をしてよかった」などいっぱいのほめ言葉。私も「非暴力で伝えたということは素晴らしいことなのですね」と共感。
 講演を終えると、会場からは語らずにいられない、と自分の気持を語りだす人もいて、すごい熱気です。「不思議なレストラン」をもう一度忠やんのアコーディオンでうたいフィナーレ。本のサインセールは黒山の人だかり。斉藤君はサインを求められると照れくさそうに似顔絵を描いてあげていました。(松浦幸子)

<京都の感想>
 充実した2日間でした。あまりにもたくさんの事がありすぎて、きりがないので一つだけ印象に残ったことを書きます。「ゆいまある」の方たちとSSTをやった時の事です。とても、おとなしい方がいました。発言することも、とても難しいと感じていました。『今から、ほめ言葉のシャワーします。皆さんが言ってもらいたい事を4人一組で順番に言い合ってください。』と、松浦さんが言った後、私は、そのおとなしい方と一緒にグループを組む事になりました。私は内心、その方からは言葉が出ないと思っていました。やはり、1周目はパスされました。しかし、2周目になると「ありがとう」と言ってくださったのです。そして、3周目にも。さぞかし労力が要ったことだろう、と私は感じました。何とか協力したいという気持ちが垣間見られて、私は大変感動しました。(丸山朋均)

<ゆいまあるの古田さんからのお礼状>
 この度は、心暖まるお話し、ありがとうございました。過密スケジュールの中、大変お疲れ様でした。学ばせて頂いた数々の事が、心にあふれています。この想いを伝えていけるよう、励んでゆきたいと思います。


動くクッキングハウス日記(パート2) 〜新潟県三条市〜
〈200人でSSTワークショップ〉
 
 午前中の講演なので東京発7時の新幹線に乗る。丸山君は4時すぎに起きて準備していたという。三条市は2回目、ともしび会の小林久美さんがボランティアとして、企画・準備に一年近くかけて下さった。   ともしび工房の皆さんや私の恩師までなつかしい方達もいっぱい。

 午後のSSTワークショップは、大きな会場に4重の円ができる。午前中の講演が終わってもみなさんが帰らずに残ってくれたのだ。SSTへの期待でワクワクしている、集中した表情で圧巻だ。私、斉藤、丸山の3人のデモンストレーションをみていて、素直に練習のいいところをみつ

けてほめてくれる。ほめほめゲームでは斉藤君が会長さんのネクタイを恥ずかしそうにほめる、と会長さんも斉藤君のネクタイをほめる。会場がぐんと和やかなムードになる。

 ほめるポイントは「具体的に、シンプルに、明るい表情で」。会場みんながペアになり、互いをほめる練習。こんなに大勢いのSSTは初めてだが、場に満ちているパワーでみんなが元気になれた。斉藤君、丸山君は場数を踏んで、コ・リーダーがうまくなり、当事者のSSTリーダーも近い将来可能になるだろう。(松浦幸子)

♪クッキングハウスよりピース9な報告を3つ♪


Part1 笠木透さんピースナインコンサート
〜クッキングハウスから全国各地への旅へ〜


 11月11日クッキングスターで、笠木透さんと雑花塾のコンサートが行われました。今回のテーマは「ピースナインコンサート」。春・夏と憲法フォークジャンボリーを一緒に取り組んできた、延長線上にあるコンサートになりました。平和への思いや、人間の権利をうたう歌に、お客様もメンバーも聴き入りました。

 しかし、今回一番の盛り上がりをみせたのは、「ター坊の家に火がついた」という替え歌です。憲法フォークジャンボリーにも出演された、陶芸家の上田達夫さんは、笠木透さんの古くからのお仲間。火事で家が全焼してしまいました。笠木さんはそのことを「大変なことだけど、笑って元気に生きていくしかないもんな」と替え歌を作ったとのことです。メンバーの吉岡さん、岩渕さんと池田さんは、さびの部分を踊って盛り上げてくれました。「恥ずかしかったけど、みんなの前でうたって踊って楽しかった。何もかも燃えてしまって、その場所で焼け跡ライブ。そんなことしていいのかな。と思ったけど、笠木さんならではの仲間を思いやる気持ちが伝わってきました。コンサートにきてよかったな。」と岩渕さんの感想です。
 
 最後は「ピースナイン」。作曲したアコーディオン奏者の岡田京子さんもお見えになったので、伴奏して頂き、みんなでうたって踊りました。「笠木さんに誰にでも親しめる曲をと言われ、作曲に苦労したけれど、クッキングハウスのみんなが踊りをつけてくれて、すごく良くなった。」と話して下さいました。「気持ちを込めて、世界に平和♪」そんな思いをこめた私たちの振り付けと共に、「ピースナイン」は笠木透さんによって、来春いよいよCD化されます。楽しみです!(林由佳里)


Part2 私たちは「憲法の夢の子どもたち」です!
〜水野スウさん 憲法の話〜


 石川県の津幡で「紅茶の時間」を開いておられる水野スウさんの『出前紅茶』(講演会)も今年で2回目。去年は、「紅茶の時間」のこと、そして著書の『きもちは言葉をさがしている』のお話でしたが、今年は何と!憲法のお話でした。

 「日本国憲法って難しそう」というのが最初にあったイメージですが、スウさんはそれをどのようにわかりやすくお話して下さるのだろうと楽しみにしていました。

 第2次世界大戦をしていた頃の、天皇に主権があるような憲法では良くない。同じ過ちを2度と繰り返さないように、アメリカと日本が一緒になって、世界の憲法の「いいとこどり」をしてつくった理想の憲法が、今の日本国憲法だということでした。

 「私たちは、幸せな未来になることを祈って作った憲法の夢の子ども達なのだ」というスウさんの一言が印象に残っています。

 女性の幸せを願って憲法作りに参加したベアテさんのお話も印象に残りました。お話を聴いていて、はっとしたのは、今の憲法の主権は国民主権、つまり私たちが主役の憲法なのだということです。そう、私たちはこの憲法を時の権力者である今の政府につきつけて、政府が独りよがりな政策を行おうとしたときには、「私たち国民には憲法〜条があります」と政府に対して命令書としてつきつけて良いのだと。このお話には、目からウロコが落ちる思いがしました。今まで9条に守られてきたおかげで、戦争にあわずにすんだ日本。

 でもこれからは、私達国民が意識して9条を守っていかなければと感じました。

 「政府が、自衛隊による戦争参加を堂々とうたった憲法案を国会に提案することはできますが、でも最終的にそれを決めるのは、私たち国民の、1票です。そのことは忘れないでほしいです。」

 スウさんのやさしい気持ちと、スーと入る語り口に、私たちの心もほぐれ、一人一人が自分の憲法への思いや、自分に何ができるのかを素直に語ることのできた、いい会でした。(小関貴雄)


Part3劇団文化座戦後60年アトリエ企画「シリーズいのち」
「いのち輝いて−ハッピークラスと不思議なレストラン−」

 

 石川県で「いのちの教育」に取り組まれている金森俊朗先生と松浦さんの対談が、11月3日文化の日に文化座のアトリエで行われました。今、教育現場において子どもも教師も大変な状況の中で生きていることや、コミュニケーションの大切さは、心の病気をした人もしていない人も共通な課題であることを話してくださいました。金森先生は、子ども達の気持ちに真剣に寄り添っている小学校の先生です。「子どもはピッチャー、教師は子どもからのどんな変化球も受け止めるキャッチャーの役割」と話してくれました。金森先生は、大きな手を伸ばし身体全体で話しをし、会場のひとりひとりに語りかけて下さいます。そんな先生のお人柄に、引き込まれるように時間が過ぎました。

 対談の司会は、女優の佐々木愛さんです。松浦さんは、お母さんのノイさんについて語って下さいました。ノイさんは、一生懸命に夫の介護をして看取ったあと、気持ちの拠りどころを失い悲しみに沈んでいたそうです。そんなノイさんに、松浦さんはキミ子方式での絵の描き方を伝えました。ノイさんは、絵を描くことも初めてだったそうです。最初に描いたのは「あかまんま」。それからは「幸子、わたしの描いた絵を見てください」と次々に描いた絵を新潟から送ってくれたそうです。ノイさんから松浦さんへ、松浦さんからノイさんへの想いが伝わり、いのちのつながりを感じました。司会の佐々木愛さんも、傍らで涙ぐんでいます(愛さんのお母さんは、女優の佐々木光枝さん)。いつもは舞台でまぶしい役者さんも、一生懸命聴いていてくれました。 

 最後に私達はみんなで「不思議なレストラン」をうたいました。
 
 身体全体で表現する金森先生と静かに語る松浦さんの対談で、アトリエがあたたかい空気に包まれた秋の一日でした。(田村陽子)


 ノイさんのことは、『いくつになっても夢を描きたい』教育史料出版に詳しく書いてあります。クッキングハウスにあります。



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